こだわりが詰まった自作の品が他にもあった!

わすさんのポリシーに沿った作品の一つとして、最近制作したものを目の前で組み立ててくれた。

▲背中に背負っていたリュックから出てきた黄色い箱
▲慣れた手つきで部品を組み立てていくと…
▲あっという間に天体望遠鏡が完成した!
▲銃のサイトも付いていたりと、見ているだけでワクワクが止まらない!

黄色い箱の中には、さまざまなパーツが収められており、それらを慣れた手つきで組み上げていったものの正体は、オリジナルの天体望遠鏡だった。

「前から星に興味があったんですけど、市販の天体望遠鏡だと、大きくて自分の車に入らないんですよ。それに市販の望遠鏡で自分がほしいと思うものがなかったんです。それなら、現場で組み立てられるものを自分で作ってしまおうと思ったんです。

量産ができるコンセプトは崩さず、レンズや精密部品以外はホームセンターの材料だけで作れる設計にしました。車やバイクの後ろに積んで公園に行って、正座して星を眺めてます。自分の好きなデザインにもできたので、作っていて楽しかったです」

紙人形ではなく自分を評価してもらえることが増えた

独立してから5年が経ち、2022~23年のあいだにPEPAKOの制作本を2冊刊行した。活動の幅を広めていくなかで、最近印象に残った仕事を聞いた。

「3Dのキャラクターモデリングにも興味があり、最近はメタバースイベントのグッズイラストを担当しました。バーチャルとリアルの世界両方にブースが用意される大規模イベントで、渋谷と原宿に自分のイラストが飾ってあるのを見たときはうれしかったです。

これまでは、PEPAKOの仕組みが珍しいから、自分は評価されているんだと思っていました。でも、最近はイラストのみを起用したいと言ってくれる企業が増えたんです。紙人形の発想以外でもクリエイターとして評価され始めたのは、今後活動していくうえで自信につながりました」

わすさんに「好きなことを仕事にする」ことについて聞いた。

「好きなことをやっていると、仕事の質が上がると強く思いました。会社員として働いていた頃、やりたくない仕事をしていたときは、良い仕事ができなかったんですよね。今は仕事にやりがいを感じつつ、こだわりをもって働けているので、この道を選んで良かったと思っています。

もちろん、作品をうまく表現できずに苦しむこともあれば、心無いメッセージをもらってイヤな気分になることもあります。そのときは、いつもマイナスな気持ちを原動力にすることで作品づくりに役立てています。“ツラいことの先には良いことがある”という精神でいれば、好きな気持ちを絶やさずに日々を過ごせるのではないでしょうか」

最後に、今後の目標を聞いた。

「これからも皆さんが面白いと思えるような作品を作り続けていきたいです。たとえば、PEPAKOは現在ショートムービーのみなのですが、長編動画を作ってみたい。PEPAKOの表現がさらに増えて楽しくなると思っています。とにかく、これからもずっと“こだわり”をもって作品を作り続けていきたいです」

(取材:川上 良樹)


プロフィール
 
わす
1995年、茨城県生まれ。動く紙人形作家・イラストレーター。2次元キャラクターがリアルの世界で生き生きと動く、紙で作られた人形【PEPAKO】を制作。X(旧Twitter):@Cermrnl、オフィシャルサイト:PEPAKO