75万人が視聴するポッドキャスト番組『ゆとりは笑ってバズりたい』の配信者・ラジオクリエイターである、ゆとりフリーター。あらゆる音声配信のプラットフォームやコンテンツが乱立するなか、黎明期から番組を続けてきた“音声配信のパイオニア”でもある。

著書『平成初期生まれは人間関係がしんどい』(小社刊)の出版から一年後、なんと、家族との事業立ち上げに挑戦。改めてこれまでの軌跡をたどる、インタビューを敢行した。

平成生まれではないですが人間関係はしんどい(笑)

なにかと息苦しい人間関係に悩まされがちな“ゆとり世代”ならではの、しんどい人間との付き合い方を描いたイラストエッセイ『平成初期生まれは人間関係がしんどい』の出版から、はや一年。人気ポッドキャスト番組『ゆとりは笑ってバズりたい』のリスナーや読者から、どのような反応があったかを聞いてみた。

「まずは書籍タイトル『平成初期生まれは人間関係がしんどい』を見て、“平成生まれではないですが人間関係はしんどいです(笑)”と言われることが多かったですね。このタイトルについては、担当さんのご提案で『ゆとりは笑ってバズりたい』の文法でキャッチ―につけていただいたのですが、思いのほか、自身の年代発表をすると共に“人間関係はしんどい”というところに共感の声をいただきました。

下北沢や名古屋での出店イベント(2023年12月Podcast Weekend 2023 ほか)では、著書を並べていたときに、参加者の方のリアクションが目の当たりにできて、とても面白かったです。

立ち読みされるお客さんのなかには“あ~これ、思い当たる人いるなぁ……”と、ぽつりとつぶやく方や、“あ! 自分、これですわ!!”と『休みの日にバイト先に顔出しにくるヤツ』を指さす方もおり(そのときは若干の気まずさを覚えた)、自分の発信したことに対する反応を、同じ空間で見ることができてうれしかったです。

昔から聴いてくれているリスナーの方からは、後方腕組み保護者のごとく“ここまでよくがんばったね……”のような念を感じていました。誕生日以外でここまで“おめでとうございます”と言われることはなかったので、本当にありがたいなと思っています」

▲休日に用も無くバイト先に顔出すヤツ

もはや“長寿番組”と評してもいいほど、数あるポッドキャスト番組のなかで異彩を放ちつづける『ゆとりは笑ってバズりたい』の人気の秘密については、どのように考えているのだろうか。

「応援してくれている人がいるので、“まだ人気ではない”と否定するのはおかしいんですが、まだまだくすぶってはいますよ……。ただ、そう言っては話が進まないと思うので、いま応援してくれているリスナーの皆さんがどう感じているか、私なりに思っているのは“聴いた人が元気になるから!”を目指しているところ、ですかね。

日々、試行錯誤している部分を(リスナーは)応援してくれているのだと思っています。私には特に詳しい分野があるわけでもないので、ほとんど日常のなかで感じたことを話しているのですが、聴いている人が“ゆとりフリーター目線”で、そのエピソードの舞台に乗ってきてもらえるように意識しています。

言ってしまえば、共感して味方になってもらえるように、心の葛藤(言い訳)フェーズが多い話し方をする傾向にあります(笑)。

“こう感じているのって、私だけなんじゃないか……”と孤独に感じていたことも、話し方次第で仲間が見つかるので、一人しゃべりはやめられないですね。また、共感されなくとも、ポッドキャストという形で発信することで、鑑賞するかのように“こんな人もいるんだ~”と聴いた人の『人間性格コレクション』の一部になれたら、そこにやりがいを感じますね」

ポッドキャストは“ネクストブレイク臭”を放ったまま?

ここ数年、ポッドキャストをはじめ、あらゆる音声配信のプラットフォームやコンテンツが乱立。これらの状況について “音声配信者のパイオニア”は、何を感じ、何を思うのか。気になるポッドキャスト番組についても聞いてみた。

「ポッドキャストは以前よりも遥かに認知度が上がってきていますが、いつまでも“ネクストブレイク臭”を放ったままだなと、個人的に思っています。

流行る流行ると期待させるだけさせて、結局はクリエイター個人のパワーでしかのし上がることができない……。でも、どこの世界(業界)も基本的にそういうものかもしれないと気づき始めました。

特に最近は、YouTubeにもRSSでポッドキャスト配信ができるようになったり、YouTube music内にもポッドキャスト項目が増えたりしてきましたよね。Spotifyでは、ポッドキャストエピソードを切り抜き動画のように、自動テキストと合わせてショートコンテンツとしてトップページに表示させたりもしていて、流行らせる準備にいよいよ腕まくりをしてきているなと感じています。

ただ、上手に波乗りできないと再生数に囚われてフォームを崩してしまい、振り落とされそうなので、ますます“自分にとってのポッドキャストの目的”を軸に発信していかなければならないと思っています。

もしかすると、プラットフォームのアルゴリズムに依存せず、口コミで広がっていけるのが一番理想的で現実的かもしれません。……となれば、やはり目の前の一つひとつの収録を、いかにリスナーの心に届くものにするか、ということに力を注ぐのが最も重要なのではないかというのが私の考えです。

ちなみに私自身、更新されたらすぐに聴いているポッドキャスト番組は『独立後のリアル』『あぶらうってこ』、芸人さんのラジオだと『中川家のラジオショー(地上波の一部が上がっているPodcast)』を聴いています。身近に感じられる(もはや身内!? と錯覚するような)安心する空間を発信してくれている番組が好きです」