趣向を凝らした仕掛けからあふれ出てくる“声”

プレミアチケットとなり、ネット上では“行きたかったのに!”という声があふれているのを知っているから、自然と責任感が湧く。さらに、なぜか3人くらいのスタッフさんが僕のあとをずっと付いて来るのもあって(あとから聞くと、外部の人で見るのが僕が初めてだったのもあって、確認したかったそう)さらに緊張が増してきた。

新築の家に入ったような素材の匂い、ビビッドな色使いが、これから降りかかる展示への期待を高める。

まだ会期中でもあるし、どんな声が聞こえてきたか、過度なネタバレはできないが、入ってすぐに真っ青なシャワーがあり、その横に「声を浴びる」と書いてあって、この展示のスタイルを理解する。

▲真っ青なシャワー

クリープハイプの4人のライブやMVなどの声の素材や、この展示のために録りおろした素材も含め、“可視化されない声”をなるべく可視化して来場者に届ける企画なのだと。

▲横にあるハンドルをひねると声が噴き出してくる

実際に、シャワーの横にあるハンドルをひねると、シャワーヘッドから声が出てくる。

「人生で声を文字通りに浴びるのって初めてだな」

そう思いながら、次の展示へと向かう。

道中にはドアがあり、仕掛けがあるものにはそのように書かれている。ドアノブをひねり、開けると、中から声が漏れてくる仕組みだ。実際にメンバーの会話を盗み聞きしているみたいで楽しい。

 
▲楽屋を模したドアからも声が漏れてくる

ドアのほかにも、楽曲になる前のデモテープ音源が流れるところなどは、ストレートに貴重なものを聞かせてもらっている気分になる。

リリースには「潜ったり、覗いたり、撃たれたり」などと、およそ声を形容する言葉とは無縁の宣伝文句が踊っていた。

潜る? 覗く? 撃たれる?

そのひとつひとつが、作品展で歩を進めるたびに、伏線を回収するように理解できていくのも、面白い。

個人的には、すぐに構成などを考えてしまうタチなので、自分の中の好みとして、側は豪華に、でも中身はくだらない、というものが非常に好きだ。

▲声を温める・声を冷やすという面白い仕掛け
▲受話器の向こうから聞こえてくる声は…!?
▲展示の中で一番くだらなくて面白かった引き出し
▲音に潜るとはこのことか…

今回の展示のなかでも、電子レンジを開けると声が聞こえてくる、受話器を取ると聞こえてくる、電球の傘みたいなものに入ると聞こえてくる、という仕掛け自体にワクワクして、さらにそれが脱力するようなものだったから、さらに面白かった。(引き出しシリーズはくだらなすぎるので、ここに来れなかった人にも何かの形で披露してほしい、メタバースとかでできないのだろうか…?)

グッと来たあとの仕掛け

声、というのは、クリープハイプを構成するものとして、非常に重要な要素であると感じる。

ボーカルの尾崎世界観の高い声について、普通の人であれば目を覆いたくなるような誹謗中傷をSNSで書き込まれることもあれば、もっとライトに「あの高い声が嫌いなんだよね」みたいにしたり顔で話す人に出くわしたことが、クリープハイプファンであればあると思う。まさに社会の窓から引用すると「余計なお世話だよバーカ」であるが、そこも逆手にとって、吸収して肥大していくのがクリープハイプの良さだ。

コロナ禍はミュージシャンにとっても大きな痛手となったが、クリープハイプは制限あるなかで、さらにファンクラブ限定の配信を行うなどの“制限”を自分たちにかけて、自身のリスナーに向き合い続けた。

展示の後半、尾崎世界観の2015年、2018年、2019年、2021年と、さまざまな年のライブMCでの「ありがとう」を、過去から現在に順に聞ける仕掛けには、思わずウルッときてしまった。自分たちのリスナーにわかりやすく感謝を伝えるタイプのバンドじゃないからこそ、こういうことをされるとグッとくる。

 
▲尾崎世界観の「ありがとう」は特別に沁みる

ただ、そこで終わらないのがこの展示の素晴らしいところ、というかクリープハイプというバンドを理解しているスタッフによる仕事だな、と感じる仕掛けが声に撃たれる、だ。

 
▲声を浴びて日常に引き戻された感じがあって良かった

“ぐっときた、そのままの良い気分では帰しませんよ、そういう価値観を持っているから、このバンドを好きなんですもんね?”という、この展示を作ったスタッフからのメッセージのように僕は受け取った。

つくづく、バンドはファンを信頼し、ファンはバンドを愛し、スタッフはその双方に愛情を持って橋渡しをしている、クリープハイプは幸運なバンドなんだなと、この展示を見て、改めて思った。

クリープハイプは、ライブハウスツアーを2月より、そのあと3月にアリーナツアーを幕張メッセ国際展示場と大阪城ホールで開催する。さらに2月3日には芸人のニューヨークとの2マンライブ『ニューヨークリープハイプ』を豊洲PITで開催する。

2023年も音楽の範囲にとどまらないクリープハイプの活動を浴びていきたい。


■クリープハイプの声をシャワーのように浴びる展 ※SOLD OUT
会期:2022/12/29(木)〜 2023/1/16(月) 19日間
会場:渋谷PARCO 4F 「PARCO MUSEUM TOKYO」(東京都渋谷区宇田川町15−1)
営業時間:11:00〜21:00 ※入場は閉場時間の30分前まで ※最終日は18:00閉場
■最新作・ライブ情報
「本当なんてぶっ飛ばしてよ」
2022年12月14日(水)配信開始
https://creephyp.lnk.to/HontoNante

<ライブハウスツアー 2023「感情なんかぶっ飛ばして」>
2023年2月1日(水)東京・下北沢DaisyBar
2023年2月8日(水)愛知・Zepp Nagoya
2023年2月17日(金)宮城・仙台GIGS
2023年2月24日(金)福岡・Zepp Fukuoka
2023年2月26日(日)広島・BLUE LIVE HIROSHIMA
2023年3月3日(金)北海道・Zepp Sapporo
詳細:https://www.creephyp.com/feature/cp_livehousetour2023

<アリーナツアー 2023「本当なんてぶっ飛ばしてよ」>
2023年3月11日(土)千葉・幕張メッセ国際展示場
2023年3月12日(日)千葉・幕張メッセ国際展示場
2023年3月25日(土)大阪・大阪城ホール
2023年3月26日(日)大阪・大阪城ホール
詳細:https://www.creephyp.com/feature/cp_arenatour2023

<ニューヨークリープハイプ>
開催:2/3(金) OPEN 18:00 / START 19:00
会場:豊洲PIT
出演:ニューヨーク / クリープハイプ
料金:スタンディング 5,000円(税込)
詳細:https://liveforward.co.jp/2023/01/post-3.html