「仲間を傷つけたやつは許さない」リベンジャーズとなった福田健悟

殴る場所など残っていないほどボコボコにされた相手
こうして、総勢100人のホワイトソウル狩りが始まったのだ。さっきの乱闘騒ぎから、時間はそんなに経過していない。まだ近くにいるはずだ。助手席で窓の外を見ながら目を光らせた。それっぽい車やバイクが通るたびに顔を覗き込んだ。異様な雰囲気を感じ取ったのか、誰1人として目を合わせる者はいなかった。
一向に見つかりそうにない気がして、違う場所に移ろうとしたとき。目の前を2人乗りのバイクが通った。手には金属バットを持っている。間違いない。アイツらだ。高崎に、車をギリギリまでバイクに近付けるように頼んだ。相手は唖然とした表情をしている。
「降りろ! 轢くぞ!」
窓を開けて叫んだ。この声に反応をして素早く路肩にバイクを止めた2人は、細い道に入って走り去った。二手に分かれた相手を高崎と分担して追走。姿を見失って十字路で佇んでいると、学校のほうにチラッと人影が見えた。
全力で追いかけたが相手も必死だ。数分の追走劇を繰り広げた結果、ようやく追いつくことができた。持っていた金属バットを奪い取って、フルスイング。倒れた相手を捕まえて、高崎と合流。高崎も標的を捕まえていた。その2人を車に乗せた直後、先輩から電話がかかってきた。
「もしもし。福田? トンボ池に来いよ! 何人か捕まえたぞ。お前の殴るとこも残しといたから」
トンボ池は、堤防の先にある野原だ。後ろの席に2人を乗せて、真ん中で高崎に見張り役をしてもらった。10分後。到着した先には、3人の怪我人がいて、全員どこも殴る場所など残っていないくらいボコボコだった。そこに自分たちが連れてきた2人を並べて、計5人の尋問を始めた。
「お前らタダで済むと思うなよ?」
「……」
「聞いてんのか!」
後ろにあった、2メートル近い深さの崖に蹴り飛ばした。
「お前は返事しろよ?」
「は、はい!」
「タダで済むと思ってんのか?」
「いえ、思ってません」
「おー! そうだよ! そうやって最初から答えろよ! 褒美に金やるからコンビニ行ってこいよ」
「え?」
「その金でハサミ買って来い! お前も俺の後輩と同じ目に遭わせてやるよ! 当然だろ? こっちは耳と首を切られてんだからな!」
「すいません! すいません!」
「それが嫌なら、メンバー全員の住所と電話番号を教えろ! 1人でも忘れたり嘘ついたら、わかってるよな?」
崖に落ちた1人を除いて、4人は一丸となって情報を集めた。それでも全員の住所と電話番号は手に入らなかった。精一杯やっているのは見てわかった。最初から全員の情報が入手できるとは思っていない。手を抜かないように脅しただけだ。
「もう無理そうだな。お前ら、他のやつらに言っとけ。今から知らない番号からかかってくるから出ろって。出なかったら、家まで行くってな」
4人から得た情報を仲間100人にメールで一斉送信。散らばった100人が、それぞれ今いる場所から1番近いところに住んでいる相手を呼び出す。先輩や仲間たちに1つだけ頼んだのは、相手を捕まえても手は出さないこと。なぜなら、狙いは相手チームの壊滅だからだ。力でねじ伏せても復讐の連鎖は止まらないだろう。第2の三浦を生むわけにはいかない。
だから、相手チームの下っ端には、チーム脱退を希望するメールをリーダー宛に送信させる。それを確認したら大人しく帰らせる。もちろん従わなければ許さない。約束を破ってチームに復帰したのがわかっても同じ。今後の方針が決まったところで、5人は置き去りにして、車を走らせた。
高崎に運転をしてもらって、僕はみんなに電話をした。車を走らせてすぐに、早速1人捕まえたという連絡が入って、現地に駆けつけた。現地にいた先輩は手を出さずに待っていてくれた。
「お前ら、なんで武器を持ってきたんだ?」
「喧嘩があるからって言われて……」
「お前らの頭が嘘ついてたの知ってるか?」
「嘘……ですか?」
「自分たちのチームのバックに、ギャングイーグルがついてるって言ってたんだよ」
「え?」
「その話を聞くために呼び出したのに、騙し討ちするようなことしやがって」
「す、すいません」
「お前は知らなかったんだろ? お前らのリーダーが悪いんだよ。どうする? まだアイツに付いてくか?」
「いえ」
「よし。じゃあチーム抜けるってメール送れ」
今回の騒動はこれで終わり…のはずが事態は急展開!
この方法はうまくいった。全く抵抗されることなく望みどおりになる。強制的ではなく、自発的に自分たちのチームのリーダーに失望をすれば、本当の意味でグループは崩壊する。そこまで計算していたわけではないが、結果的に良い流れを作り出した。
メールを確認して相手を帰らせたあとで、仲間たちにも順調に事が進んだ旨を伝えた。さらに続けて僕たちが1人、仲間たちが11人を、チームから脱退させることに成功した。
時刻は深夜1時。ゴールは全員を捕まえることだが、今日は最後の目的を果たすだけで充分そうだ。その目的とは、相手リーダーの確保。住所は知っている。もう100人の人手は必要ない。そのことを協力してくれた仲間たちに伝えて、1人で相手リーダーの家に向かった。まだ家に帰っていなければ、帰ったところで捕まえられる。張り込みをしている警官のように、物陰に隠れて動向を伺った。
2階の窓ガラスには人影が見える。ひょっとしたら、すでに家の中にいるのか。そうなると手出しはできない。2時間後。帰ってくる気配はなかった。高崎には家で待機をしてもらっていた。あてのない捜索を漫然と続けるわけにはいかない。終わりにしよう。
家にいる高崎に連絡をして迎えに来てもらった。明日も早めに動き出す必要がある。家に帰るなり、すぐに横になって眠りについた。
日が明けて携帯を見たら、何件か着信が入っていた。折り返して内容を聞くと、相手の学校がわかったという連絡だった。その学校にいた仲間たちに情報をリサーチしてもらったところ、彼らは学校に来ていないことがわかった。退学届けを出した者までいるとのこと。それに加えて、相手チームのリーダーの親が、警察に被害届けを出したという知らせが届いた。
「もしもし? 俺と兄貴で、相手の親のとこに行くから、一応お前も来てくれ」
4代目のリーダーから連絡があって、彼の兄である初代ギャングイーグルの先輩と3人で車を走らせた。余裕な素振りで話す2人を後部座席で見ながら、心もとない気持ちになった。
着いた先は、昨日1人で張り込みをしていた家の前。夜とは様相が違う。話しているあいだは車で待っているように言われた。どんな話し合いが行われているのか。僕が呼ばれたのは、当事者としての情報が必要となったときのため。出番はあるのか。そんなことを思っていたら、2人が出てきた。
「どうなったんですか?」
「被害届けを出すのはいいけど、自分の息子も凶器を使ったのを忘れるなって言ったんだよ。そしたら、被害届けは取り下げるってよ」
さすがだ。今までも似たような状況を乗り越えた経験があるのだろう。今回の騒動はこれでオシマイだ。これ以上の深追いは必要ない。この件に協力をしてくれたみんなに、感謝と残党狩りの中断を言い渡した。
これで長い戦いに終止符が打たれる。そう思っていた。数週間後。僕の家に警察が来るまでは。







