連載第15回「湿った秋の救世主」

小さなタルトに詰まった、最大限のバターの香り
風が冷たく乾き始めると、その風に刺激をされて色あせた葉っぱが地面に落ちていく。
幾つも重なった落ち葉の上を歩くと、一枚一枚がパリパリと大袈裟な音をたてて粉になっていくのがわかる。
歩みを進める感覚と食べ物を咀嚼する感覚は少し似ていると感じる。
私が今回漂流したお店は、代々木公園駅すぐにある、「ナタ・デ・クリスチアノ」というお店。
差し入れやちょっとしたおやつにピッタリなサイズのエッグタルトのお店である。

お店の前にメニューの看板があり、そこにはたくさんの味のタルトが並んでいた。
聞き馴染みのないポルトガル語でネーミングされており、つい全ての味の詳細を全て読みたくなった。
サッと見ただけでも魅力的な味が並んいたが、また食べたいものが増えてしまうのでメニューにはあまりのめり込まないようにした。

アズレージョタイルで装飾され、白と青で統一された外観は可愛らしく異国感を漂わせている。ドアの中に入ると受け取りの小窓があった。
小窓から見える厨房にはたくさんのエッグタルトが並んでいたが、焼き色や膨らむ場所がそれぞれ違って一つひとつに個性があった。ワクワクが一気に押し寄せてきた。

イートインスぺースは無く、外にあるテーブルとベンチでいただく。
掌サイズのエッグタルトからは、このサイズに抱えられる最大限のバターが香っている。
食欲そそる艶やかな表面には綺麗にこんがりとした焦げ目が付いている。


口に入れると齧る前にもうバターの風味が鼻を抜けた。
その香りに勢いづけられ、歯を入れると軽くて薄い生地が何層にも重なってサクサク音を奏で、かなりの音量のサクサク音が食感と耳から伝わってきた。
派手な音の中に優しい甘さが漂ってきた。
卵をたっぷり使ったクリームはほんのり優しい甘さだ。
口の中で噛めば噛むほどバターの香りが増し、優しいクリームと混ざり合ってゆく。

- 撮影 :
- YOSHIHITO KOBA
- ヘアメイク :
- AMU(SHE)
- スタイリング :
- 加藤なお(ALCATROCK)





