新橋『立ち呑みとんかつ まるや』でカツと晩酌という小粋な選択肢

２周目は塩で日本酒をグビリ

▲ハムカツに卵フライ

揚げ物を肴に酒を飲ませる。意地悪な言い方をすれば、安易な発想とも思うわけです。でも違うのはみんな知っている。どの店だって揚げ物は食べられるし、茶色の衣をまとった酒飲みのお友達に関しては、みんな一家言ある。だから、これで勝負となると、かなりのレベルが求められる。

こちらで出されたメニューは、どれも衣がカラッとして、中の肉も上質で、食べていて飽きない。油をまめに綺麗にしているんでしょう。胸焼けもしないし、酒ともよく合う。だから何度もおかわりをしてしまうんです。

▲ヒレカツには塩をかけてみました

さてと、じゃんじゃん持ってきたとばかりにオーダーしたものの、気がつけばお腹は膨れてしまいました。ここまでオーダーしたのは、ハイボール数杯に揚げ物を数品かしら。随分エコな飲み方をするようになったと思います。歳をとるのも悪いことばかりじゃない。

▲何を思ったのか熱燗を頼んだら…

ヒレカツに塩をかけていただきながら、これは日本酒と合わせてもいいなって思いました。油っこさを拭い去るにはシュワシュワ系がいいんだろうけど、こちらの揚げ物はどれも油切れがいいから、日本酒と合わせれば、上質なペアリングを楽しめるのではないかと。

「熱燗お願いします」とオーダーすると、にわかに慌て出す厨房。聞けば、滅多に注文する人がいないらしく、大きな一斗缶みたいなのが用意されました。ああ、これは楽しみだ。

▲ついでくれるのは担当オジマです

カツをひと口、そして酒もひと口。うん、うまい。皿にこぼれた塩を指につけて舐めながら、また酒をひと口。うん、これもうまい。「だからどんどん血圧が上がっていくんだ」って連載を愛読している主治医に怒られそうだから、この辺にしておきましょう。

私たちの周囲には、一人のお客さんが多いのが印象的でした。もしかすると、私みたいに、減塩、減カロリーに辟易して、こっそりとこの店に来てるのかもしれません。だって心なしか楽しそうだもん。揚げ物をつまみに酒と一人の時間を静かに楽しんでいる。酒飲みレベルも高そうだ。

▲こちらは人気のカツサンド。お土産にできます

いい歳した大人が(私ですね)、揚げ物と酒をしみじみと楽しむ。うまいけど、食べすぎちゃいけないぞ、と自分を戒めながらも、箸が止まらなくて、仕方ないなぁと言いながら酒が進んでしまう。

私はこの店に入るとき、高揚感と背徳感を感じたんですね。何かに似ていると思ったら、子どもの頃、親の目を盗んでこっそり通った駄菓子屋を思い出したわけです。そうか、ここは大人の秘密基地なのかもしれない。小遣い握りしめて、こっそり通うのが似合うんですよね。ああ、いい店だ。

さて、思ったよりも深酒をしたので、そろそろお暇しましょう。ごちそうさま、また来ますね。次はどの街へ行こうかしら。

▲カツサンドで残った耳。余裕があるときは揚げてくれることも

『立ち飲み・マイ・ラブ♡ - 痛みに負けるな！-』は、次回３/26(金)更新予定です。お楽しみに!!