「引いてはいけない」福田健悟が不良グループに入って覚悟したこと

偽物の不良である自分が本物になることを決意!
この日にわかったことは、アウェーだということ。同年代は僕以外に3人いるが、彼らは固まって行動をしている。このチームに馴染むためには、僕にも知り合いが必要だ。誰を誘うか考えたうえで、直感に従って高崎を誘うことにした。よく遊んでいたからだ。返事はあっさりOK。次の週には、一緒に集会に行く約束をした。
電車で行くには、僕の家からのほうが利便性が良い。ひとまず我が家に集合することにした。母は僕たちが赤色の服を着ているのを見て、怪訝そうな顔をしている。この違和感を払拭するために、2人でバンドの練習に行くという嘘をついた。
最寄り駅まで自転車で向かっていると、マンションの前に数人がたむろしている横を通り過ぎた。悪そうな連中だったが、僕たちはギャングイーグル。赤色の服を見れば一目瞭然だ。勝ち誇ったような気持ちで自転車を漕ぎ続けること2、30秒。後ろからバイクの音が聞こえてきた。
「なにガンつけてんだよ」
おいおい。相手が誰だかわかってるのか? 俺たちは天下のギャングイーグルだぞ? 後悔先に立たずという言葉を知らないのか? と心の中で言い終わる前に、相手の顔を見てハッとした。
暗いからわからなかったが、彼は前にギャングイーグルのリーダーと、仲良くしゃべっていた人だった。相手が誰だかわかっていなかったのは僕のほうだ。後悔先に立たず。自転車を漕ぎ続ける高崎を止めて、僕は自転車から降りた。
「すいませんでした」
「名前は?」
「福田です」
「そうか、ギャングイーグルのヤツだな? あんまり調子に乗るなよ」
良かった。ギャングイーグルに入っていなかったら、殴られていたかもしれない。駅に着いて電車を待ちながら、ホームで高崎と共に安堵感を分かち合った。
集会場所にはリーダーが先に着いていた。高崎を紹介して、他のメンバーが集まるのを待った。全員が集まるまでのあいだに、同年代の3人に高崎を紹介して、初めて会話のラリーを交わした。そんな和やかな空気を断ち切るように……
「福田って、どいつ?」
小野木さんが僕の名前を呼んだ。どうしたんだろう。僕なんか小野木さんの人生に登場できる器じゃない。現に小野木さんと話すのは3回目だが、未だに顔と名前は覚えられていない。
「今日ここに来る途中で謝っただろ?」
嫌な予感がした。さっきのバイクの人から連絡が入ったのか。そうに違いない。やっぱり、上の人たちの知り合いだったんだ。知らずに睨みつけてしまったことを、怒られるのだろうか。恐る恐る事実を認めた。
「は、はい」
「チームの名前を汚してんじゃねーよ! 俺らにやられるのがいいか、他のヤツにやられるのがいいか選べ」
やってしまった。そういうことか。相手が誰であれ、立ち向かわなければならないんだ。甘かった。チームに入れば、助けてもらえると思っていた。僕が入ったのは岐阜で1番のチームだ。ふさわしくないことをしたら、看板に泥を塗ることになる。
「なんで謝ったんだ?」
「リ、リーダーとしゃべっているのを見たことがありまして」
「……ふぅん。じゃあ仕方ねぇな」
許してもらえた。これが余計に今後のプレッシャーになっていく。リーダーの知り合いだったから謝ったというのは、言い訳にすぎない。ギャングイーグルのユニフォームを見て、怯まないような相手には恐怖しか感じない。でも他の誰より怖いのは先輩たちだ。今後は何があっても、引いてはいけない。
こうして偽物の不良だった僕は、本物の不良になることを心に誓ったのだ。







