お笑い芸人としてどうするべきか…キャバクラ通いでわかったこと

初めてのキャバクラトークで隠せなかったアタフタぶり
こうして1人でライブに出るようになった。この選択をしてわかったことがある。僕は1人でネタをやることは苦手だが、舞台上でフリートークをするうえでは、1人のほうが向いている。相方がいると、自分だけが目立ってはいけないと思って、少し控えめになってしまう。フリートークが認められるようになって、ラジオへの出演が決まった。
前にボランティアをしていたときに、呼んでもらった番組だった。前回の出演は3年前。1回限りで時間が経っていたこともあって、番組のラジオパーソナリティは、僕のことを覚えていなかった。
「人数分のお金を渡すから、ジュース買ってきてくんない?」
前はジュースが用意されていて、生い立ちやボランティアを始めた動機を聞かれた。今回は、放送が始まるとクイズを出されて、間違えたら炭酸ジュースを一気飲み。芸人だから問題はないが、多少の驚きは隠せなかった。この放送は、いろんな人たちの耳に届いた。その中の1人である大志から、久しぶりに電話がかかってきた。
「ラジオ聞いたぜ! 頑張ってるな」
「おぉ、ありがとう」
「それより、プライベートのほうはどうよ? 充実してる?」
「ちょっと前に、失恋したとこだよ」
「そうかぁ。ちょうど良かった。俺は今、ピザ屋の店長やってんだけどさ、店の客でキャバクラに連れてってくれるが人いるから、一緒にどうよ?」
何がちょうど良かったのかわからない。他のやつだったら不謹慎すぎて、電話を切るとこだ。あれから数ヶ月が経って、少しずつ傷は癒え始めていたものの、急な誘いには戸惑いを覚えた。行くのは構わないが、連れて行ってくれるのは大志のお客さんであって、僕のお客さんではない。大丈夫なのだろうか。
「大丈夫だって。今日も店閉めたら行くから、23時くらいに柳ヶ瀬に来てくれ。じゃあな」
キャバクラは苦手だった。初対面の女の人と喋ることが、得意ではなかったからだ。最終的に行くことにしたのは、芸人として生きていくうえで、何かしらの糧になると思ったからだ。時間通りに言われた場所に着いて店に入ると、50代くらいの男性が席に座っていた。両脇には、2人の女性がいる。大志は軽く僕のことを紹介して、あとから来た1人と飲み始めた。よくわからない状況にアタフタしていると、急に隣から女性の声がした。
「初めまして。ミナミです。よろしくお願いします」
名刺を渡された。何を喋ろう。いや、一応コッチは客だ。この場合は相手がリードしてくれるだろう。大志は楽しそうに喋っている。
「どういう関係なんですか?」
「1人は友達で、アッチの1人はアイツのお客さんらしいんだよね」
「そうなんだ」
「……」
会話が終わってしまった。気まずい。何かと気苦労が絶えない。こんな所に、自ら大金をはたいて来る人たちの気が知れない。この状況を見かねて、大志が話かけてくれた。
「健悟。どうなん? お前のタイプ?」
なんていう質問だ。こんなことを聞かれて「タイプじゃありません」なんて言えるわけがない。かといって「タイプです」なんて言ったら、告白をしてるみたいなもの。ダメだ。答えるのに時間がかかりすぎている。迷っていると思われる。早く答えないと。
「すげー聞き方するな。綺麗だとは思うけど」
「じゃあ番号交換したら?」
コイツは正気か? 断られたらどうするんだ? 横目で女の子のほうを見ると、携帯を取り出している。え? いいの? そうか、自分から聞いたわけじゃないから、別にいいか。しょうがないなぁ。そんな態度で連絡先の交換をした。







