お笑い芸人としてどうするべきか…キャバクラ通いでわかったこと

「休みだから会いたい」というメールが届いた
時間になって外に出た。“ごちそうさまでした”を言うのも忘れて、茫然としていた。なんだったんだ、今の空間は。ほんの数時間だったが、カルチャーショックのようなものを感じた。まず自分自身のダサさを思い知らされた。
同い年の大志があれだけ堂々としていて、なんで僕はモジモジしていたんだ? 大志に話を振ってもらって、内心すごく助かったと思っていたのに、余裕の表情を見せていたのもダサい。
「ごちそうさまでした」
遅れて感謝を伝えるあたりもダサい。
このあとも何度か誘われて、同じメンバーでキャバクラに行った。回を重ねるごとに、少しずつ理解は深まった。ここは本気で恋愛をする場所ではなく、疑似恋愛をする場所だ。擬似であれ恋愛なら、コッチは客だから、という態度は良くない。本気になって振り回されるのも良くない。ただ楽しく会話をするために、遊びに来る場所なのだ。
普段の恋愛でも、片方が相手の機嫌を損ねないように、気を遣っている関係は楽しくない。それなら自分が楽しませてもらうことだけを望んで遊ぶのではなく、自分が相手を楽しませることも考えなければならない。お笑い芸人としては、もってこいの場所だ。
「かっこいいね」
全く思っていなくても、そう言ってくれる。お世辞とは気づかないくらいにうまい。手の平で転がされて、借金をしながら通う人たちの気持ちが痛いほどわかる。
『会って話したいな』
こんな連絡が来て、ノコノコ出向いたら、相手の思うツボだ。運良くデートができたとしても、最終的には店に連れて行かれる。相手の休みの日に自分から連絡をしても、ギリギリまで会えるような雰囲気を醸し出されて、9割の確率でドタキャンをされる。そんななか、1人だけ例外がいた。
『今日は休みだから会いたい』
休みの日に相手から連絡が来るのは、なんの策略もない証拠。ショッピングで高い物をねだられても、断ればいいだけ。こんなラッキーなチャンスが舞い込んだのにも関わらず、運悪く予定が入っていた。このあとも誘われるたびに予定が入っていて、泣く泣く断るしかなかった。次こそは、何があっても誘われたら会いに行く。そう思って待っていたが、次に送られてきたメールはショッキングだった。
『彼氏が会ってくんないから、リストカットした写真を送ったんだ』
昔なら、絶対に連絡を絶っていた。でも、今の僕は芸人だ。彼女の顔から失った笑顔を、取り戻さなければならない。
「45」は、次回4/15(金)に更新予定です。お楽しみに!!
お笑い芸人になりたかった。東日本大震災を目の当たりにした抑えきれない想い | 「45」 | WANI BOOKS Newsクランチ!(ニュースクランチ!)
お笑い芸人・福田健悟が綴る、自伝的ファンタジー小説。「自分は変わる、変わりたい」。苦悶する福田健悟がテレビで見たあの日の光景。気づいたら被災地に駆けつけていた。








