本を出版しませんか?――1通のメールがコロナで閉ざされた道をこじ開けた

目標はでっかくⅯ‐1制覇! 新コンビで挑んだ結果は!?
この方法は間違っていなかった。読んでくれた人たちからの賞賛の声が、何よりの証拠だった。森田だけだった読者も、バイト仲間たちに広がって、お客さんにも広がった。今まで話したことがなかった、同期の芸人たちも読んでくれるようになって、再びコンビ結成の話が持ち上がる。
「いつまでに結果が出なかったら、辞めようとか考えてる?」
同期の杉本に会って、一発目に聞かれた質問だ。辞めるつもりはないと答えた。そもそも失敗する可能性は、考えていない。仮にダメだったときのことを考えたとしても、上京して7年が経った今は、既に30歳を越えている。もう後には引けない。お笑い芸人の道を諦めて、就職先を探しても、中卒の自分が仕事を見つけられる可能性は低い。
「良かった。俺コンビ組むために、1つだけ条件があってさ。それが辞めないっていうことだったんだよ」
なんだ? 僕は面接をされていたのか? まぁいい。ヤル気があるからこその質問だ。今までの相方は、ヤル気がなかったか、途中でドロップアウトをするかのどちらかだった。辞めるつもりかどうかは、過去の経験を踏まえると、確かに知っておきたい情報だ。お互いに、何度も解散を繰り返していた僕と杉本は、慎重になっていた。今すぐコンビを組むのではなくて、1つの目標に取り組んで、結果次第で判断することにした。
その目標とは、M-1グランプリだ。約5000組がエントリーをして、我こそはという漫才師たちが、頂点を目指して競い合う大会。本番まで2ヶ月しかないため、勝ち上がる可能性は限りなくゼロに近いが、今後のコンビ活動を見定めるには良い機会だ。
本番当日。やはり結果は甘くなかった。一回戦敗退。仕方がない。たったの2ヶ月で、勝ち上がるような甘い大会ではない。大事なのは、結果より過程。彼となら、1つの目標に向かって、必死に取り組むことができるということがわかった。
こうして、僕たちはコンビを組むことになった。コンビ名は、ガネーシャ。杉本は、今までの相方と明らかに違っていた。小山と組んでいたときは、小山が芸人活動よりも、サイドビジネスを優先していたのが原因で解散した。でも今は、立場が逆転してしまった。僕が借金をしているせいで、週に6日もバイトをしていて、杉本に時間を合わせてもらう形になっている。それでも杉本は文句を言わずに、僕に合わせてくれた。
そんな杉本の気持ちに応えるために、毎週1つは新ネタを作って、週1のライブとネタ合わせを怠ることはしなかった。すると少しずつ、舞台で手応えを感じるようになってきた。今度こそうまくいく。ようやく、理想の相方に出会うことができた。
翔吾くんとの関係がうまくいっていないのも、僕がなんの結果も出していないからに違いない。自分の母親が、売れていない芸人と付き合っていたら、心を閉ざしてしまうのも無理はない。あと少し。あと少しで、全てがうまくいく。







