本を出版しませんか?――1通のメールがコロナで閉ざされた道をこじ開けた

コロナ感染拡大で打ちのめされたときに届いたメール
そんなあるとき。まさかの形で、順調な流れに歯止めがかかってしまう。驚異の感染力を持つウイルスが、世界中を襲った。コロナウイルスだ。驚くべきスピードで蔓延して、緊急事態宣言が発令。ライブ活動はストップ。芸人としての活動は、ゼロになってしまった。
だからといって、嘆くこともできない。自分よりツラい思いをしている人たちが、たくさんいる。コンビニのアルバイトの場合は、職を失うまでの事態には陥らないが、飲食店は次々に閉店を余儀なくされていた。生きていくことさえままならない状況と、夢半ばで活動がストップする状況の苦痛は、比べ物にならない。
とはいえ、先行きが不透明になって、希望が打ち砕かれたダメージは大きかった。今後はどうしていけばいいのか。何もできない現実に、打ちのめされかけていた。そこに、吉本興業から1通のメールが届く。
『本を出版しませんか?』
なんてタイミングだ。このメールは、全ての芸人に送られていた。その名も『吉本作家育成プロジェクト』。吉本興業と、ベストセラー作家を生み出した伝説の編集者が、共に新たな才能を発掘するために立ち上げられたオーディション。
このメールがきたときは、『小説家になろう』で小説を書き始めてから約1年が経っていて、ストーリーは完成していた。コロナのせいで自粛生活を強いられて、家での生活が多くなっている人たちに、本を通じて笑いを届けることができる。
迷いは一切なかった。応募フォームには『書いてみたい本の概要』と記されている。僕は自分が鑑別所に入った経験を活かして、更生を促す本を書きたいと記載して、メール送信のボタンを押した。
1ヶ月後。1次選考通過のメールが届いた。信じられない。200人中50人に残ったと書いてある。こんなの初めてだ。過去を振り返っても、オーディションに通過した経験は、一度もない。次いで2次選考は、講習を受けて出された課題を提出するというもの。
「まず始めに言っておきます。出版においては、無名こそが最大の武器になります」
この企画に参加している顔ぶれを見る限り、自分は誰よりも無名だった。Twitterのフォロワー数も、バイト先の高校生のほうが多い始末。このあとも、言われることが全て自分に当てはまっていた。
「自分のクソ時代とのギャップを書いてください」
昔の僕はクソだった。だから警察に捕まって、名前を失った。でも今は、バイト先で明るく元気な接客を心がけて、多くの人たちに認めてもらえるようになった。
「人の悩みを解決できる内容にしてください」
依然として名前を失ったままの未熟な自分に、多くの人たちの悩みを解決できるかどうかはわからないが、経験をもとに伝えられることはある。精神的に不安定だったときの経験を活かして、リストカットをしていた女性の、自傷行為に歯止めをかけたことがある。
『小説家になろう』で書いていた本をベースにして、講師に言われたことを付け加えていけば、商品になるのだろうか。今回の企画は、自分のための企画なのではないか。そう思う程だった。
課題を提出して、数週間後。2次選考通過のメールが届いた。残っていた50人から、30人に厳選。もう偶然ではない。これで選考は終わり。ここからはオーディションではなく、1ヶ月後の出版プレゼン大会に向けての、ノウハウを学ぶ。プレゼン大会で結果が出なければ、出版はできないが、今は最終選考まで残ることができた喜びに浸りたかった。
そして、3回目の招集がかかった。前日のバイトは朝まで。昼からの講習会には遅刻寸前。息を切らしながら部屋に入って、1つだけ空いていた席に座った。隣を見ると、スリムクラブの内間さんが座っていた。
「45」は、次回7/8(金)に更新予定です。お楽しみに!!
誰にもマネできない!? 明石家さんまから習うプロフェッショナルの流儀 | 「45」 | WANI BOOKS Newsクランチ!(ニュースクランチ!)
お笑い芸人・福田健悟が綴る、自伝的ファンタジー小説。仕事もプライベートも順調に進んでいた福田だが、彼女の子どもである翔吾君との関係だけはうまくいってなかった。








