【最終回】ついに名前を取り戻した福田健悟の希望に満ちた人生再出発!

去っていた相方、最後まで自分を信じてくれた家族
「これから、いくつか会見に出ていただきます。ただ、今までの仕事は……」
「わかってる。スポンサーが嫌がるからね。相方は順調にやってる?」
「そのことなんですけど、杉本さんは今後1人でやっていきたいそうで……」
仕方ない。ようやく掴んだ成功だ。1人でやっていける状態なら、まだよかった。僕のせいで、彼の仕事まで奪ってしまったら、謝るだけじゃ済まない。どちらにせよ、迷惑をかけたことは事実だ。改めて、謝罪の場をセッティングしてもらおう。
このあと、いくつかの会見を終えた。どの会見でも聞かれたのは、僕が罪を被った相手のこと。いくら無罪が認められたとはいえ、翔吾のことは口にできない。せっかく野口徹朗が表に出ないようにしてくれたのに、言ってしまえば、彼の努力は水の泡になる。全ての会見を終えて車に乗ったときに、マネージャーは言った。
「マナミさんを、別の場所に呼んでいます。記者に尾けられているでしょうから、家には行かないほうがいいと思ったので」
彼は、自分の仕事以上のことをしてくれている。今回のことで、相方には別のマネージャーがついて、彼は僕のほうに残ってくれた。会社に言われたからなのはわかるが、仕事を失った男なんかに付きたくないはずだ。
向かった先は、吉本の本社だった。到着してすぐに車から降りて、受付の先のドアを開けた。そこには、マナミと翔吾がいた。僕の姿を見るなり、マナミは走って僕の胸に飛び込んで言った。
「健ちゃん、ごめん、ごめんね」
「俺の方こそ、ごめんね。心配かけたね」
翔吾はうつむきながら、頭を下げた。
「ごめんなさい」
「翔吾。お前は謝らなくていいんだよ。悪いのは、翔吾じゃないんだから」
翔吾は泣きながら、コクリとした。
「マナミ。これからは、しばらく簡単に会えないと思う。それに、今後の俺は仕事が減っちゃう。それでも、言わないと後悔しそうだから言うね。結婚しよう」
泣いていたマナミの顔は、綺羅びやかに輝いて、首を縦に振った。
「ヤッター! 福田翔吾がよかったんだ」
「ハハハ、よかった。これからよろしくな、翔吾」
「うん。よろしくね! お父さん」
名前で呼ばれるよりうれしかった。ようやくわかった。人は名前で呼ばれるかどうかではなく、誰かに認められたいだけなのだ。あくまで、自分を認識されている実感を得られるのが、名前で呼ばれるときに多いというだけだ。
それよりも大事なのは、自分で自分を認めること。僕は人を笑顔にする存在であって、人の笑顔を奪う存在ではない。17年前の僕は、人から笑顔を奪っていた。それが、自分の笑顔を奪うことになるとも知らずに。
マナミに出会う前の僕は、自分を満たすことにも関心がなかった。だから、人を喜ばせることにも、中途半端になっていた。番号で呼ばれることに妥協していたときも、人を喜ばせることに妥協をしていた。自分でふさわしくないと思う自分を、認める必要はない。今の自分が認められないのなら、認められる自分になればいい。
あの頃に戻って、自分に言うことができるなら、言ってやりたい。2人とは別の車に乗って、帰り道の途中で母に電話をかけた。
「ごめん。心配かけて」
「あんたがあんなことするはずないって、わかってたよ。これから大変かもしれないけど、健悟なら大丈夫だね。あんたは強いから」
母は僕を信じてくれていた。僕が最終的に、翔吾を信じることにしたように。母はずっと前から、僕の先を歩いていたのだ。
電話を切ると、今後のことについて、マネージャーから報告を受けた。記者会見が数回。そのあとは、何も予定が入っていない。1~2ヶ月はスキャンダルの前に働いたお金でなんとか生活できたとしても、問題は貯金が尽きてからだ。







