「大人になった私に、乾杯を。」

自分の姿が誰かを笑顔にしている
いつしか冷め始めていたスープを、ひと口飲む。こぼした時の慌ただしさも消えた静けさの中で、ふと思う。
あの頃の私は、「大人」になる自分なんて、欠片も想像できなかった。先のことを考えても、そこを生きている自分の姿がどうしても思い浮かばないから、未来を想像すること自体が怖かったのだ。
ただベッドに横たわって、天井を見つめて過ごす。太陽の下も歩けない。ラムネを齧って喉を通すだけの毎日。治そうとする気力も、明日を生きようという意思さえも消え失せていた私が、今の私を見たら、なんて思うだろう。
普通に自分の足で外を歩いている姿にさえ驚くはずだ。ましてや、ステージの上に立って、たくさんのペンライトの光に包まれながら歌い、踊っているなんて。自分の声が誰かに届き、自分の姿が誰かを笑顔にしているという現実は、ただ天井を見上げていたあの引きこもりの少女からすれば、何かの間違いか、あるいは絵本の中にしか存在しない別の世界の出来事にしか見えないだろう。

少し無理をして強がった私も、全部ひっくるめて愛せるように
もちろん、最初から頑張れたわけじゃない。
どうしようもないくらい何もできなかった日々の方がずっと長かった。あの暗闇から抜け出した今でさえ、嫌われるのを怖がって、必死に周りに合わせて、結局は自分の居場所に怯えて自分を見失っている。
それでも、私はあの絶望から、今の場所へたどり着いた。不器用で、ボロボロで、それでも何とか今日まで自分の身体を引きずって、必死に自分を繋ぎ止めて歩いてきたんだ。
きっと、これからも人に合わせて、勝手に傷ついて、帰り道に1人で矛盾に落ち込むのだろう。中身は相変わらず子供のままで、そしてきっとまたスープをこぼす。
綺麗に大人になれなくても、傷だらけになりながら必死に歩いて、ここまで私を連れてきてくれた。その、不器用で、泥臭くて、必死だった私のすべてが、本当の私なんだと思う。
ここまで、生きてきたんだ。その事実だけで十分だ。
いつか、演じないありのままの私で、もっと素直に笑えるようになれたらいいな。本当の私も、少し無理をして強がった私も、全部ひっくるめて愛せるように。
20歳おめでとう。
大人になった私に、乾杯を。

次回のHKT48 梁瀬鈴雅「鈴の音」は、7月末更新予定です お楽しみに!!
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- 写真 :
- 谷川 嘉啓













