「大木を蹴り倒した」規格外の巨人と悲運のケツキック対決!

岐阜でナンバー1のチーム「ギャングイーグル」に入り意気揚々。そんなある日、1対100で戦って勝ったという伝説を持つ男が少年院から帰ってきた! そんなすごい男と不意にゲーセンで対面してしまった福田健悟の運命やいかに!?
「俺が誰かわかる?」伝説の男との初遭遇
安田さんが少年院から出る日は近いと聞いていたが、時間の経過にしたがってスッカリ忘れていた。月1集会が始まる前に、同世代のチーム仲間とゲームセンターでたむろしていると…….。
「俺が誰かわかる?」
突然1人の男に問いかけられた。約10人が溜まっている場所に、1人で突撃してくるなんて只者ではない。男の身長は約2メートル。すぐにピンときた。仲間たちは黙っている。コイツらも血の気が多い連中だ。なんとかしなくては。
「安田さんですか?」
「おぉ、よくわかったなぁ」
危なかった。機転を利かさなかったらヤバかったかもしれない。安田さんの身長が、2メートルもあるという情報を掴んでいたのが功を奏した。今までの人生で、2メートルの人を見る機会はあまりなかったが、目の前で見ると規格外の大きさだった。
集会が始まって、河本さんが全員に呼びかけた。
「コイツが安田だ。聞いたことあると思うけど、今日から戻るからな」
「よろしくなぁ!!」
「よく戻ったな」
「ウッス!」
これを機に、安田さんは月1で集会に顔を出すようになった。果たして、僕たちは安田さんの伝説を目の当たりにすることができるのだろうか。この望みはすぐに現実のものとなる。
警察もただ黙って見ているだけ
翌月。月1集会と祭りが重なり、地元中のチームが集結。ヘルズファミリー、クラップス、阿修羅、我威邪(ガイヤ)……そうそうたる面子が集まっている。その中でも、我威邪の初代リーダーである和也さんは、かなり有名な人だった。小柄でシュッとしてはいるが、喧嘩になるとすぐに人を刺すと聞いていた。
「夜露死苦ー!!!」
我威邪の声出しが始まった。和也さんは引退をした身。遠くから高みの見物をしている。特攻服の男たちが円陣を組んで、血気盛んに大声で叫んでいた。これが安田さんの逆鱗に触れてしまう。
「うるせぇんだよ」
そう言うと、安田さんは我威邪のメンバーに詰め寄った。
詰め寄られたほうも負けていない。言い返すことはしなくても、目つきや態度はギラギラしている。その様子を見てスイッチが入った安田さんは、相手の足を蹴って転ばせた。安田さんもデカいが、相手も190センチ近くある大男だ。ひょっとしたら、壮絶な殴り合いが始まるかもしれない。すると、和也さんは立ち上がって2人に近づいた。いくら安田さんでもナイフで刺されたら無事ではいられない。
どうなる? 和也さんは、安田さんの後ろから忍び寄って言った。
「安田くん。ごめん。勘弁して」
「おぉ、ちゃんと手なづけとけよ! あんまり騒がれると、イライラするからなぁ」
和也さんが頭を下げた。2人は同い年だ。これだけでも安田さんのすごさはわかる。こんな人と同じチームにいれることが誇らしかった。
そんな思いにふけっていると、徐々に警察が集まってきた。一気にムードが引き締まる。そこに遠くからバイクの音が聞こえてきた。暴走族のおでましだ。
「キタキタキタキター!!」
うれしそうな安田さん。バイクの音が近づくと同時に猛ダッシュで走って、タイミング良くバイクにドロップキック。転がるバイク。倒れる暴走族。
「ウォーーーーー」
安田さんの雄叫び。なぜか蹴られたほうが謝っている。相手はバイクを置いて走り去った。さぞかし怖かっただろう。トボトボ戻ってきた安田さんの一言には、耳を疑わずにはいられなかった。
「これで街の平和は守られた」
この様子を警察は黙って見ていた。普通なら逮捕されてもおかしくない。出所して1ヶ月、少年院に送り返されるのが妥当だ。なぜ警察は動かなかったのだろう。安田さんが怖かったのか。確かに、警察の前で堂々と犯行に及ぶ人間には狂気しか感じない。
それに身長は2メートル。警察も人間だ。危険を察知したのか。そうは言っても、威信がかかっている。拳銃や警棒を所持しているのもそのためだ。それでも黙って見逃したということは、相手が暴走族だったからとしか説明がつかない。







