チームを抜けたい僕は先輩たちの追い込みで「死」を覚悟した

追い詰められた福田の頭によぎったのは・・・
後ろを振り返って、追いかけてきていないのを確認した。本当は家まで送ってもらいたかったが、申し訳ない気持ちが上回って、途中で降ろしてもらった。
逆の立場だったら、知らない男が助手席のドアをノックするような状況は異常だ。映画やドラマにしかないようなシーン。こんなやつに関わったら、トラブルに巻き込まれそうな予感しかしない。そんな僕を、彼は車に乗せてくれた。それだけで充分だ。家まで乗せて行ってほしいなんて、口が裂けても言えない。
歩くこと約20分。家の周りには、先輩たちの車が止まっていた。電柱の影に身を隠して、様子を伺った。明らかに、血眼になって僕を探している。もし、目を離した隙に家に乗り込まれたら、食い止めることができない。結局この日は、朝まで車がいなくなるのを待った。
「ただいま」
「どこ行ってたの!? 前の仲間たちのとこじゃないでしょーね」
なんて鋭いんだ。顔の腫れは、ごまかせないほどではない。異性の友達と会っていたことにして、呆れさせるしか方法はなかった。
携帯には、先輩たちから何十件も着信が入っている。夜になると、外にはまた車が止まっていた。次の日も。また次の日のも。同じように見張られている状態は続いた。せっかくやめていた安定剤に躊躇なく手が伸びていく。袋から薬を取り出して、水と一緒に飲む直前だった。スピリチュアルの本に書いてあった言葉が頭をよぎる。
『果たせなかったことを果たすために、何度も生まれ変わる。それは自分で撒いた種を、自分で刈り取るため。だから良いことも、悪いことも返ってくる。返ってくるのは、来世だけではなく、数年後、数か月後、数日後に返ってくる場合もある』
ホワイトソウルのメンバーを追い込んだのは、数か月前。今の僕が追い込まれているのは、数か月前に彼らにしたことが返ってきているからだ。こんなに怖かったのか。あの時の彼らは、退学届を出すくらい怯えていた。そんな恐怖を与えた報い。この恐怖から逃げてはいけない。薬を飲んで楽になろうとしていた。
ダメだ。現実に向き合わないと、今後のためにならない。手の震えは止められなかったが、持っていた薬はなんとか袋に戻すことができた。1週間後。ようやく見張りはいなくなった。
「お父さん、聞いて。誰かわかんないけど、駐車場にイタズラで割れた瓶が撒かれてたのよ」
まだ終わっていない。母は誰の仕業かわからないと言うが、間違いなく先輩たちの行為だ。割れた瓶が駐車場に撒かれていたことは、過去に一度もない。このタイミングで、ほかの誰かが瓶を投げたとは考えにくい。もう永遠に平穏は訪れない。自分が悪い。これから先ずっと、罪を償うために罰を受け続けなければならないのだ。
「今日、イタズラ電話があったのよ。中国語で叫んでたから切ったけど、何回もかかってきたのよ」
先輩たちは、自分の手を汚さないように中国人を使うと聞いたことがある。中国人は、ターゲットが瀕死になっている姿を写真に撮る。その写真を先輩たちに渡して、報酬が支払われるというシステムだ。
家に電話があったということは、狙われているのは僕だけじゃない。もう限界だ。いなくなるしかない。僕がいなくなれば、全ては丸く収まる。ここで被害を食い止めるためには、自ら命を絶って罪を償わなければならない。
「45」は、次回3/4(金)に更新予定です。お楽しみに!!
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鑑別所にいた経験のある芸人・福田健悟が綴る、善と悪の定義が問われる自伝的ファンタジー小説。更生し、己の名前を取り戻すため、もがき苦しむ物語。エピローグ








