お笑い芸人になるための第一歩。初舞台の漫才を完全再現!

以前のように、世間に迷惑をかけることは絶対にしない。社会に貢献する。自分の名前を取り戻す。そしてお笑い芸人になる――ついに自分の夢に向かって走り出す決意をした福田健悟。そんな彼を周りもサポートしてくれるが、肝心の漫才に対するお客さんの反応は……。苦悩する日々はまだまだ続く。
自分の名前を取り戻すために必要なもの…それは「愛」!
「お久しぶりです。福田さん。調子はどうですか?」
「野口さん」
「はい?」
「すいませんでした」
「……」
「僕、ずっと野口さんに失礼な態度を取っていました。言われた通りに過去を振り返ったら、わかったんです。今までの自分がどれだけダメだったか。悪いのは自分だったのに、人のせいにしてたんです」
「それがわかっただけでも立派ですよ。それに福田さんは、わかっただけじゃなくて、行動にも移している。本来だったら、残り数日で永遠に名前は戻るはずです」
「え?」
「ただ福田さんは、芸人になろうとしてるみたいなんで、少し時間はかかるかもしれませんね」
「どういうことですか? なんで芸人を目指したら、名前を取り戻すのに時間がかかるんですか? お笑い芸人を目指すのは良くないことなんですか?」
「そういうわけじゃないんですけどね。お笑い芸人さんっていうのは、真面目なイメージが邪魔になる場合もあるじゃないですか? 現に江頭さんも、ボランティアしたことを隠してましたしね」
「全部お見通しなんですね」
「私は芸人さんを担当したことがないんですけどね。他の職業の方は、皆さん仕事をしながら慈善活動もやっていました。それが世間に公表されるのは素晴らしいことです。触発されて、ボランティアをする人が増えるかもしれないし。ところが芸人さんの場合は、公表することがファンの方の期待を裏切ることにもつながってしまう」
「1つ聞いていいですか?」
「なんですか?」
「この更生プログラムで、名前を失う理由はなんですか?」
「いずれわかります。ヒントは愛。まあ何を選択するかは福田さんの自由なので、考えて決断してください」
こう言って、彼は去っていった。最後の質問をした理由は、名前を取り戻すことに対する重要性がわからなかったからだ。以前のように、世間に迷惑をかけることは絶対にしない。現に最初は、残り数日で名前を取り戻すことができる、と言っていた。ヒントは愛だと言うのなら、社会に貢献することが喜びになっている今は、なんの心配もない。それに、人から言われて止める程度の軽い気持ちではない。
小学生の頃に考えた「ドラゴンボール」を題材にした漫才
とはいえ、何から始めればいいのだろう。岐阜にも舞台くらいはあるはずだ。だが舞台でやるネタはない。どうやって作ったらいいかもわからない。いや、小学生の頃に作った記憶がある。あの時のノートが残っていればいいが。家中を探すと、ホコリまみれのノートが見つかった。
「いやー突然ですけど、皆それぞれ夢があるじゃないですか。お金持ちになりたいとか、結婚したいとか」
「ありますね〜」
「お前、もしドラゴンボールがあったらどうする?」
「まず持つよね。で、こうして。(ピッチャーの構え)こう。(投げる)」
「いや、投げたらダメだろ」
「確かにスーシンチュウは投げたらダメだよね」
「なんでスーシンチュウは投げたらダメなの?」
「じいちゃんの形見だから」
「形見じゃなくても投げたらダメでしょ! ドラゴンボールは願いを叶えるモノだぞ?」
「願いはあるよ」
「なに?」
「ストライクとること」
「小さい夢だなぁ。それドラゴンボールがなくても叶うでしょ」
「ドラゴンボールがないとダメな夢か」
「そうだよ」
「わかった! ドラゴンボールがあったら……」
「どうすんの?」
「まず持つよね。で、こうして。(ボーリングの構え)こう。(投げる)」
「だから投げるなって!」
「確かにスーシンチュウは投げたらダメだよね」
「じいちゃんの形見だからだろ?」
「いや、指入れる穴が一個あまるから」
「あれ穴じゃないんだよ! お前は夢ないのか?」
「夢はストライクとることだよ」
「もーいーわ」
「でも一番の夢はね」
「なんだよ」
「この漫才で笑いをとることだな」
「それは人任せにしたらダメだろ」
なんだ? これは。小学生のレベルではない。この才能があれば、自分は芸人の世界で天下を取れるかもしれない。ただ仕方がないことではあるが、荒削りだ。今このネタをやっても、笑うのはドラゴンボール好きだけだろう。スーシンチュウと言っても、アニメや漫画を見ていない人には伝わらない。







