お笑い芸人になるための第一歩。初舞台の漫才を完全再現!

忘年会で初めて漫才を披露するチャンスが到来!
さて。どうしたものか。と、そこに水谷さんから連絡があった。
「森に炭を撒きに行くんだけど、来ない?」
水谷さんは森を守る活動をしていた。話を聞く限り、炭を撒くと枯れた木が復活するらしい。森の木が枯れると、木の実がなくなる。木の実がなくなると、熊が餌を求めて人里に降りてくる。降りてきた熊を、人間は銃で撃つ。だが自然を破壊したのは人間側。この活動には多くの人達が参加して、皆で重たい炭を持って山登りをしていた。
ここ何年も、運動をしていなかった自分にはキツかった。年上の人たちも何人か参加していたが、楽々と動いていた。慣れていて、体が出来上がっている感じだ。この集まりで、食事会をしたり、飲み会もやっていた。楽しい空間だったので、暇があれば参加していた。年の瀬。このメンバーで忘年会をやることになった。
「健ちゃん、忘年会で漫才やってみない?」
「いいですね!」
水谷さんに言われて、二つ返事で答えたものの、人前で漫才などしたことがない。大勢が集まる忘年会で、なんのネタをやればいいのか。まさかドラゴンボールのネタをやるわけにはいかない。ここに集まる人たちは、自然を大切にしている。そういう人たちが共感できるネタのほうがいい。水谷さんに台本を渡して、何回か練習をした。本番当日。笑ってくれればいいが。
「突然だけど、熊さんが森から降りてきて、人に撃たれるニュースやってたじゃん?」
「あ〜やってたね」
「あ〜ゆ〜ニュース見ると悪いのは熊だから、一見撃たれても仕方ないって思わない?」
「ん〜まあ確かにね」
「でも本当は、人間が自然を破壊して、森から木の実がなくなるから、仕方なく出てきちゃうんだよ」
「あぁ、そうなんだ! それは知らなかったわ」
「でしょ? でも事実を知ったら、みんなの考えが変わると思うんだよね。だから今日は、今の話をわかりやすくするために、私が熊さんの役やるから、健ちゃん人間やってみてよ」
「わかりました」
「じゃあ、いくね。あぁ、お腹すいたなぁ。どこかに木の実なってないかなぁ。あ、あった!(箸で取る)」
「ちょっとちょっと。なんで箸を使ってるの?」
「あ、そっか。(手でとる)モグ、モグ、モグ。あーおいしい。お腹いっぱいで動けない。よし。居眠りでもしよう。グーグーグー」
「寝たらダメでしょ! 餌がないから、人里に降りてくるって言ってたじゃん」
「あぁ、そうか! あー、お腹すいたなぁ。森には餌がないし! よし! こうなったら杉浦さんの家に行って、食事させてもらおう」
「誰だよ、杉浦さんって!」
「優しい人ですよ。あの〜すいません。私お腹がすいちゃって。少し、おすそわけしてもらえませんか?」
「そんな熊いないでしょ! もう全然ダメじゃん! 僕が代わりに熊やるから、人間やって。あー、お腹すいたなぁ」
「あ、熊さんだ! 畑仕事、大変だから手伝ってくれません?」
「あぁ、いいよ。じゃあクワ貸して」
「ありがとう。お礼に木の実をあげるよ」
「ワーイ。じゃないんだよ! えぇい、畑を荒らしてやる! ガサー!」
「あ、熊だ! バーン!」
「うぅ……まさか、撃たれるなんて……」
「いや、今のは撃ったわけじゃなくて、花火あげただけだよ」
「いい加減にしろよ! なんで熊に畑荒らされて、花火あげるんだよ」
「熊さんも餌なくて大変だから、花火あげて楽しんでもらおうと思ってさ」
「もーいーわ」







