常におびえながら暮らす毎日。手放せない精神安定剤。それでも今は亡きタケルが背中を押してくれる。「自分は変わる、変わりたい」。苦悶する福田健悟がテレビで見たあの日の光景。気づいたら彼は被災地に駆けつけていた。そこで意識の底から湧き上がってきたアツい想い。今、新たな道へ踏み出す時が来た!

タケルに「お前らしくないぞ」と言われてしまう

ちょっとコンビニに出かけるときでもキョロキョロしていた。どこに誰がいるかわからない。狭い町だ。結局、あの中国人からの電話を最後に、何事もなく日常生活は流れ始めた。それでも、精神状態は元に戻らなかった。

ホワイトソウルのメンバーも、同じ状態だったに違いない。勾留施設に入って罪を償ったつもりでいたが、本当の償いは、人に与えた苦痛を体験することなのだろう。こうして僕の顔から笑顔はなくなった。

自分は笑って過ごしていい身分ではない。幸せになろうという考えは捨て去るべきだ。そう思いながら、下を向いて生きている僕を見て、家族は心配そうだった。しょうがない。どれだけ心配をされても、自分を責めることはやめられない。償いのためには、家族が心配をしようが関係ない。そう自分に言い聞かせれば言い聞かせるほど、罪悪感に襲われた。

数日前に言い合いをしたばかりの父までもが心配をしている。留置所まで面会に来てくれたときもそうだった。捕まった僕のことを、怒るわけではなく心配してくれていた。そんな父に対して、自分が非行に走ったのは父のせいだと責任を押しつけてしまった。

バイトができないのはタトゥーのせい。タトゥーを入れたのは、マヤが僕を自暴自棄に追い込んだせい。いつまで僕は、全てを人のせいにして生きていくつもりなのだろう。そもそも、浮気をされたのは自分のせいなんじゃないか? 自分が良い男だったら、マヤは他の男に目を向けなかったのではないか?

「健悟。私にはわかるんだけどね。今、タケル君は、健悟の後ろで佇んでるよ。温かい感じがする。私にはわかるんだ」

この言葉に嘘はなかったと思う。本当にタケルの魂が見えていたかどうかはわからないが、大事なのはそこじゃない。それが嘘だったとして、なんだというんだ? 彼女が僕を励まそうとしてくれていた気持ちは、紛れもない真実だ。そうでなければ、タケルが近くにいるなんて言う理由がない。もし今、タケルが近くにいたら言われてしまう。

「いつまでもメソメソしてんなよ! お前らしくないぞ」

タケルも、残された人たちに悲しんでほしいとは思っていないはずだ。アイツは皆の涙を見て喜ぶような奴じゃない。僕の家族も同じだ。僕の落ち込んでいる姿を見て、喜びはしない。大切な人たちに心配をかけることが償いではない。