「目的のためなら頑張れる」10万円を貯め芸人として勝負に出るため東京へ

アルバイトが見つからない! 初日にぶつかった現実の壁
早速、ネットで見つけた物件の不動産屋に連絡をして、内覧に行くことにした。レンタカー代は約1万円。ガソリン代も約1万円。高速料金は往復で約2万円。10万円の貯金額から、4万円の出費を差し引いたら、残りは約6万円。初期費用が0円だとはいえ、引っ越し時に6万円だけの軍資金で、上京して大丈夫だろうか。
だが、既に固まった覚悟が揺らぐことはなく、バイト先に休みをもらって、東京へと車を走らせた。ところどころでパーキングエリアに寄って、約5時間の長距離運転が終了。約束の時間に不動産屋のドアをノックした。
「このレンコンってとこはどうなんですか?」
「……あ、あ〜、“はすね”ですね。はすねは〜……」
蓮根と書い“はすね”と読むらしい。地図を見ながら条件を提示して、3つほどの物件に絞った。全て内覧をして、最も綺麗で値段がリーズナブルな場所に決めた。そのあとはバイト探し。引っ越し費用は、レンタカー代が乗り捨て料金で約3万円。そこから、高速料金とガソリン代を差し引いたら、手元に残るのは1万円しかない。
もしバイトが決まらなかったら、上京した翌月は餓死も視野に入れた生活となる。時間はない。レンタカーの返却時間までには、バイトを決めないといけない。思い立ったら、即行動だ。すぐさま、引っ越し先の近辺にあるコンビニに立ち寄って、タウンワークを手にとった。
「もしもし。タウンワークを見て、電話させてもらいました」
「ありがとうございます。希望のシフトはありますか?」
「週4日か、週5日で働けたらうれしいんですけど……」
「あぁ、すいません。今ご用意できるのが週3日のシフトになってしまうんですよ」
家賃は3万9千円。そこに、光熱費や携帯代などを含めると、週3日では厳しい。次に電話をかけたところは、希望通りの日数で承諾をしてもらえたものの、夜勤は募集していないと言われてしまった。芸人として、昼間に活動することがメインになると考えたら、バイトは夜勤じゃないとダメだ。
その次に電話をかけたところは、時間帯や日数の条件は申し分なかったが、面接は翌日以降になると言われた。レンタカーの返却日は、明日の朝8時。今から5時間後には、東京を出発しないと間に合わない。冷静に考えたら、今日中にバイトを決めるのは無謀だった。
残された道は、上京後すぐに日雇いバイトを見つけて、行きあたりばったりの生活を送ること。長時間の運転と、バイト探しでクタクタになって、車の中で仮眠を取った。3時間後。空腹を満たすために、近くのコンビニでパンを買って帰ることにした。
「ピッ、ピッ、はい210円ですね」
「あのぉ〜」
「はい?」
「バイトって募集してないですよね?」
「え? してると思いますよ」
ダメ元で聞いた甲斐があった。と思ったが、時計の針は22時を回っている。こんな時間まで、コンビニの店長が働いているとは思えない。
「店長さん、いらっしゃらないですよね?」
「いますよ」
「え!?」
「ちょっと呼んでくるんで、待っててください」
はやる気持ちを抑えきれずに、女性従業員のあとを付いていった。ワクワクしながら事務所の扉の前で待っていると、扉が開いた瞬間に、大柄で声のデカイ店長が出てきてこう言った。
「おぉ、今日からキミはウチの家族だ」
この出会いは、今後の芸人活動において、なくてはならない出会いだった。
「45」は、次回4/22(金)に更新予定です。お楽しみに!!
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