コンビが長続きしないのは自分のせい? 次々とNSCを辞めていく相方たち

相方が辞めてしまうのはひょっとして自分のせい!?
数カ月が経って、学校にも慣れ始めた頃、ダメ出しで注意をされる回数は減っていった。1人でやってきたのは、自分の力を試すためだったが、もともとはコンビで漫才をやりたかった。そろそろ次の段階にシフトチェンジしてもいい頃だ。有り難いことに、授業の一貫で「相方探しの会」という催しが行われていた。参加人数は、約40人。
この40人は、ボケとツッコミに分けられた。僕はボケの列に並んだ。見事にボケ20人、ツッコミ20人に分かれた。どんなツッコミをしたいか。どんなボケがしたいか。1人ずつ自己紹介をした。それを聞いて、自分と合いそうな相手がいたら、声をかける。まるで合コンだ。僕は自分がボケの列に並んでいたのにもかかわらず、同じ列に並んでいた君島イクデイビスに声をかけた。
「ありがとう。実は俺も気になってたんだ」
入学式からは話してなかったが、彼は自己紹介のときに爆笑をとっていた。コンビ成立。彼とならうまくいくに違いない。しかし、この自信は瞬く間に打ち砕かれる。この日を皮切りに、彼は学校に来なくなってしまった。
「今日ネタ見せだったけど、何かあった?」
「ごめん。体調悪かった。次は絶対に行くから」
そう言っていたが、次の授業も君島イクデイビスは休んだ。
「ごめん。実は自信がないんだ。自己紹介のときに爆笑をとって、皆には面白いやつだと思われてる。でも期待に応えられそうになくて、恐いんだ」
「そうか。どうする? いつか来るなら待つし、プレッシャーになるようなら終わりにしよう」
「ごめん。まだ決められない」
「オッケイ! じゃあ、決まるまで俺ひとりでやってるわ。1人でやるのも成長になるから気にすんなよ」
あのポテンシャルを持っていて、自信を持てないというのは不思議だ。でも気持ちはわからなくもない。ギャングイーグルだった頃に、地元で一番のチームという称号を、プレッシャーに感じていた。そして半年後。
「ごめん。俺もう辞める。健ちゃんには、俺より良い相方が見つかると思う。もう待たせることはできない。もっと早く言えば良かったね。ごめん」
「大丈夫。1人の時間も楽しかったし。お前みたいな面白いやつと会えて良かったよ。ありがとな」
違う形で出会っていれば、仲良くなれたと思う。本当は一緒にやりたかったが、相方は仕事仲間だ。綺麗事は言ってられない。次の相方探しの会で出会ったのは、少し歳下の女の子。この子は暗かったが、学校には来ていたし、個性豊かで面白かった。
「じゃあ、次のネタどうしようか」
「私ネガティブなの……」
「う〜ん。そうか。ところで、次のネタだけど」
「死にたい」
「え?」
「死にたい」
「えぇっと……そういうときは、逆のことを自分に言い聞かせたほうがいいと思うよ。生きる生きるって言ってみ」
「生きる、生きる、生きる、生きる、生きる、生きる、生きる、生きる、生きる、生きる」
「そうそう」
「ここは?」
「なに?」
「宇宙」
未知の世界だった。ピザという言葉を10回言って、肘をヒザと言ってしまうゲームなら、馴染みがある。ところが彼女のゲームは、宇宙が答えだ。わざとワケのわからないことを言って、困らせているのだと思ったが、詳しく聞いたら彼女なりの理論があることがわかった。「ここは?」というのは、空間を意味していたようだ。
確かに思い返してみたら、彼女が指をさしていたのは、肘ではなく地面だった。わかったような、わからないような状態ではあったが、普通ではないこの発想は、笑いになるかもしれない。そう思って、舞台で試してみた。
「ど〜も〜。いや〜うれしいですね。こうして舞台に立てるっていうのは」
「死にたい」
「いや死にたいって……そんなこと言われても。そういうときは、逆のことを自分に言い聞かせたほうがいいと思うよ。生きる生きるって」
「生きる、生きる、生きる、生きる、生きる、生きる、生きる、生きる、生きる、生きる」
「そうそう」
「ここは?」
「なに?」
「バティオス」
結果は、僕が死ぬかと思う程スベった。「ここは?」と聞かれて、彼女は僕たちが立っていた劇場の名前を答えた。スベった理由は、宇宙と言わなかったからではない。あまりに暗い雰囲気で、笑いが起きるような空気じゃなかった。今回の失敗を活かして、次に挑戦。と思っていたが、結局その機会が巡ってくることはなかった。
「今までありがとう。おかげで前向きになれたよ。でも、自分には向いてないってわかっちゃった。あなたなら成功すると思う。頑張ってください」
また辞めてしまった。なぜ自分と組んだ相方は辞めてしまうんだ? ひょっとしたら、自分のせいなのか? 学校生活も終わりに近づいてきて、最後の相方探しの会が行われた。







