彼女へのプロポーズに燃える福田にかかってきた母親からの悲痛な電話

闘病中の父から飛び出した言葉とは?
数日後。ライブに行って、出番終わりに携帯を見ると、母親から着信が入っていた。1件や2件ではない。急用だろうか。折り返し電話をかけると、呼び出し音が鳴るか鳴らないかのタイミングで、母は電話に出た。
「もしもし。あのさ、お父さん、もう長くないかもしれないからさ」
声が震えている。嘘だろ? このタイミング? よりによってなんで? 今まで迷惑をかけてきて、恩返しできると思った途端にこれ? 高齢だから心配はしていたが、間に合うと思っていた。あと少し。あと少しなのに。
「帰って来てくれない?」
先のことは考えられなかった。とにかく、今すぐにでも新幹線に乗って帰りたい。はやる気持ちを押し殺して、バイト先に電話をかけた。
「もしもし。父親がヤバいって連絡があって…」
「え?」
「母親から泣きながら電話があって……」
「今すぐ行ってこい! コッチのことは何も気にしなくていいから」
こらえていたものが、頬を流れた。店長は全てを悟ったように、早口で背中を押す言葉だけを投げかけてくれた。電話を切って、駅に向かった。新幹線の当日券を購入して、岐阜羽島へ。途中でマナミと相方にラインを送った。羽島駅までは、母が車で迎えに来てくれていた。
「今どういう状況なの?」
「病院で入院してるんだけど。来週の手術がダメだったら助からないって……」
「いきなり体調崩したの? 今まで、1回も体が悪いなんて聞いたことなかったけど」
「言っても心配かけるだけだと思って、黙ってたけど、前から癌は見つかってたのよ」
久しぶりに見た母もやつれていた。ダメだ。自分まで落ち込んでいる場合じゃない。
「とにかく成功するように祈ろう」
返事はなかった。沈んだ空気のまま、車を走らせること、約20分。病院に着いた。受付で手続きを済ませて、2階の階段を登ってすぐにある父の病室を開けると、扉の開く音で父は目を覚ました。
「帰ったのか」
こんなに優しい声で話しかけられたのは初めてだった。いや留置所へ面会に来てくれたとき以来か。
「状態は? 安定してるの?」
「ん〜厳しいな」
言葉自体は重いが、言い方は軽かった。この差が、妙に心を締めつける。
「健悟と2人にしてくれないか?」
そう言われて、すぐに身構えてしまった。こんなことを言うのは珍しい。母は何も言わずに、部屋から出て行った。下を見たまま何も話そうとしない父。静かな時間が流れている。その流れに身をゆだねるように、緩やかに話し始めた。
「まあ聞いたかもしれないけど、足に癌が転移してな。手術するんだよ」
母から聞いた“癌”と父から聞いた“癌”は印象が違う。母からは恐怖が感じとれたが、父からのは受け入れた強さを感じる。
「どうなるかわからないんだよ。ダメかもしれないし、大丈夫かもしれない。どちらにせよ、長くないのは間違いないな」
決して暗い雰囲気ではなかった。伝えたいことを全て吐き出していない様子で、少し体勢を起こすと、何かを決断したような表情でこう言った。
「お母さんのこと頼んだぞ」
「45」は、次回7/29(金)に更新予定です。お楽しみに!!
“笑いのカリスマ”千原ジュニアの番組から届いた初のテレビ出演オファー | 「45」 | WANI BOOKS Newsクランチ!(ニュースクランチ!)
出版プロジェクトの説明会でスリムクラブの内間と連絡先を交換した福田健悟。そして緊張しながらもプレゼンが終わり、運命の時、1番最初に名前を呼ばれたのは自分だった。








