出版プロジェクトの説明会で隣に座っていたのは、あのスリムクラブの内間だった。そんな縁から連絡先の交換ができて、自分のTwitterまでフォローしてくれた。芸人を辞めなくてよかった――そして迎えたプレゼン当日。これまでの成果をぶつけた結果、なんと最初の出版社から呼ばれたのは「福田健悟」の名前だった。

「飯行こう」と内間さんが声をかけてくれた

1番最初に名前を呼んでもらえたからと言って、安心はできない。順位の発表は、5位から順番に上にあがっていく。結局は1位じゃないと、意味が無いのではないか。そう思っていた。その思いとは裏腹に、参加者の中で1番の無名芸人だった自分を選んでくれたことは、純粋にうれしかった。心の中で、何度も何度もお辞儀をした。

内間さんは1位に選ばれた。さすがだ。すぐるも、他の出版社から1位に選ばれた。2人とも、次から次に名前を呼ばれた。だからといって、嫉妬心はなかった。1社でも名前を挙げてくれたことが、心からうれしかった。そして、最後に『気になる人』として、2社から名前を呼んでもらって、プレゼン大会は終わりを迎えた。

目まぐるしくも、最高な2ヶ月だった。これからどうなるんだろう。そう思っているところにスタッフが来て、今後の流れを教えてくれた。選んでくれた出版社の方と、吉本の出版部の方と、僕の3人で打ち合わせをする予定が組まれた。内間さんと一緒に外に出て、話しながら帰りの駅へと向かった。

「とりあえず、2人とも名前を呼ばれて良かったね。この先どうなるかわからないけど、タイミングが合えば飯行こう」

いつ会えるかはわからないが、わかっていることもある。それは必ず、再会できる日がくるということ。頑張って一緒に仕事ができるようになれば、伝えることができる。

「あのときは、ありがとうございました」

そんな未来を夢見ながら、明日へと走る電車に乗って、身体を揺らした。

後日。約束通り、打ち合わせが行われた。話し合いの結果、ウェブ連載を始めることになった。バイト先では

「おー! おはよう! 先生」

と言ってイジられたが、芸人としての初仕事。プレゼン大会で言った通り、実体験に笑いを交えながら、自伝的ファンタジー小説を書くことにした。毎週金曜日。18時更新。『小説家になろう』で書いた小説が完成していたとはいえ、伝説の編集者から授かった金言をもとに、連載用に書き直す作業は簡単なものじゃなかった。

寝ている時間や、バイトをしている時間以外は、常にスマホのメモアプリで文章を書いた。読んでくれた人たちからは、うれしい言葉を頂いた。

「感動して、泣いちゃったよ」

「福田くんの本読んでから、読書熱が蘇ってきたよ」

こうして自分の表現したことを、毎週のように評価してもらって、充実した気持ちで連載を続けた。