父親の手術成功を祈る福田の「もう一つ」の願いとは?

母から届いた「お父さん大丈夫だったよ」という連絡
東京に着いて、今までと変わらない日常が始まった。変わったのは、来週に控えた父の手術の成功を祈るようになったこと。このときは、再来週に放送されるテレビ出演の内容を、SNSなどで告知していた。
『本がキッカケで、初めてテレビに呼んでもらうことができた! 2番目に笑いがとれたのは、本番前マネージャーさんに、家の中でナメクジを見たことがあると言ったこと。1番目はオンエア上で言ってます。3月23日。21時〜』
やはり今までとは違う反応だった。このとき、芸人を志すようになってから、初めて不安を感じた。自分に関心を寄せてくれる人が多ければ多いほど、プレッシャーを感じる。芸能界には、華やかなイメージしか持っていなかった。活躍している人たちは、今の僕と比べものにならないくらいの注目をされている。初めてのことで、動揺していた僕は、来週分の連載に頭を悩ましていた。
そんなときに、大志から電話がかかってきて、世間話のついでに相談をしてみた。すると、的確なアイデアが、次から次へと飛び出してくる。そのおかげで、切羽詰まった状況は脱することができた。読者の反応も良い。不思議な気分だ。誰も僕の相談相手が、ニートだとは思っていないだろう。だが奇しくも、彼のアイデアが的確だったのは、有り余った時間にネットで情報を仕入れていたからだ。
翌週の朝。夕方には、父の手術の結果が出る。前日も夜から朝までバイトで、普段なら昼は寝ているが、気になって眠れなかった。術後は、母から連絡がくることになっている。もう手術は始まっているだろうか。夕方になっても、連絡は来ない。自分から連絡をしようとも思ったが、バタバタしている可能性もある。
そんなことを考えているうちに、気づいたら携帯を握りしめたまま眠っていた。目覚まし時計の音で目を覚ますと、着信が1件入っていた。母だ。
「もしもし。お父さん大丈夫だったよ」
声を聞いた瞬間にわかった。前回とは全く違う。さらに言うなら、実際は声を聞く前に、なんとなく答えは想像がついていた。前回は、何件も着信が入っていたが、今回は1件しか不在着信が残っていなかったからだ。
「お父さんに代わるね」
「心配かけたな」
「良かった。成功おめでとう」
「おぉ。ありがとう。テレビは来週か?」
「そうそう。21時から放送するから、よかったら見て」
「おめでとう!」
「ありがとう。じゃあ、そろそろバイト行く時間だから。また連絡する」
一気に体の力が抜けた。心配してくれた仲間たちに連絡をして、父の無事を伝えると、全員が喜びを口にしてくれた。マナミにいたっては、泣いて喜んでくれた。







