連載第12回「この夏優柔不断が加速する」

懐かしい潮風は、寒天から吹いてきた。
懐かしい潮風が吹いたような気がした。ほとんど初めて食べる甘味なのに、不思議といくつもの記憶が鮮明に蘇った。
私が今回漂流したお店は高田馬場にある「寒天工房讃岐屋」さん。

大きな道路から少し離れた、普通車がすれ違えるギリギリ位の細い道から、小滝公園を横断し、更に細い道に入る。
右に曲がり、神田川に沿って歩く。
辺りは静かな住宅街であり、街の喧騒から少しだけ距離を置いている気分になる。
少し歩くと、縁側と白い暖簾が急に目に入る。途中の道のりに、この先にお店がありそうな雰囲気はなく、突然現れた。
ぽつんと、しかし堂々と佇むお店の様子から、創業大正三年の老舗がこだわりや信念を残し受け継いで、今もこうしてここにあることが安易に想像つく。
暖簾をくぐり、店内に入ると大きなショーケースが目の前にあり、中にはテイクアウト用のあんみつが並んでいた。
ここはこだわり抜かれた寒天が入った最高のあんみつが食べられるお店である。

私はあんみつにあまり馴染みがなく、正式にいただくのはこれが初めてである。正式な形ではなく、誰かに一口もらうことはあったが、メニューで隣にパフェがあったらそっちを正式に自分の分として注文していた。
粒あんのクリームあんみつを注文した。
運ばれてきた第一印象は、「和製パフェや」である。
甘味を別の甘味で例えることがどれほどご法度なのかはわからないが、わからないことを言い訳に素直な感想を書かせていただく。

- 撮影 :
- YOSHIHITO KOBA
- ヘアメイク :
- AMU(SHE)
- スタイリング :
- 加藤なお(ALCATROCK)







