連載第12回「この夏優柔不断が加速する」

知らなかった日本の夏に、出会った。
少し深めの大きな茶碗はあんみつのためにあるくらい、ほかでは見ない絶妙な大きさと深さをしている。

オレンジ色の杏子、ミルキーなバニラアイス、食欲そそるあんこ、和の雰囲気を底上げする赤エンドウ、まっしろでちゅるちゅるした白玉。そして目を凝らして下を覗くと黄金に色づいた寒天がキラキラ輝いている。私は日本を心底誇りに思った。
胸が高まったまま、まずは寒天だけをいただく。

驚いた、寒天はこんなにも海の香りがするのか。
まるで帰省したときに家の前で車から降りたときに香る匂いではないか。
たしかに、前にあったのは川だった。
もう一度外に出て確認するべきかと思うほど、新鮮な潮風が鼻を抜けた。
ぷりぷりとした歯ごたえも、今まで食べた寒天とは一致しない。本当にすごい寒天を食べているのだろう。
店主の方曰く、それぞれ違った特徴の天草を三つ掛け合わせて作っているようだ。
弾力、粘り気、かおり、色合いなど、最高の寒天を作るための完璧な配合があるらしい。完璧だと言われて納得の食感と風味だ。
アイスやあんこと合わせていただく。

一口目とは表情をコロリと変えて、甘く馴染みのある味になった。かき氷やアイスクリームとは確実に違う魅力があるから、昔から今になっても夏の味として色あせることがないのだと分かった。
私くらいの世代の人間にあんみつを食べる文化があまり浸透していない気がする。
休日にパンケーキやケーキを食べに行く話は度々耳にするが、あんみつを食べに行く、もしくは行ってきたという話はあまり耳にしない。
こんなにも美しい日本の甘味を知らずに過ごすのはもったいないと思う。実際に私も今までなぜ食べてこなかったのかが不思議である。
この文章が古くから伝わるこの味が同世代にとって更に身近になる一つのきっかけになったら嬉しい。
先の世代になっても大きく形を変えることなくありのままの姿であって欲しいと願っている。

私はまた新たに美味しいスイーツと出会い、選択肢が増えた。
この夏、去年よりも食べるものを決めるのに時間がかかりそうだ。
第13回の更新情報は、Newsクランチ!編集部の公式Xでお知らせいたします。
X:@nc_waniwani
【information】
寒天工房讃岐屋
住所:〒169-0075東京都新宿区高田馬場3-46-11
アクセス:
東西線落合駅より徒歩12分 西武新宿線下落合駅より徒歩7分
JR高田馬場駅早稲田口より徒歩15分 JR新宿駅より関東バス10分
営業時間:11:00 - 17:00
[テイクアウト]11:00~17:00
[イートイン]12:00~15:30
定休日:水曜日
Instagram: @kanten.sanukiya
- 撮影 :
- YOSHIHITO KOBA
- ヘアメイク :
- AMU(SHE)
- スタイリング :
- 加藤なお(ALCATROCK)








