反省第20回「親父、オレ大使になったよ」
お布団で反省文
ぱーてぃーちゃん・すがちゃん最高No.1、はじめてのエッセイ連載。日常の小さなクヨクヨを綴った、布団の中で書いた反省文。


1年前に『Reply Life』(NHK)という番組で、亡くなった親父のルーツを巡る企画があり、親父が生前お世話になった、兄貴分的な人がやってる居酒屋さんに話を聞きに行ったり、故人を体に憑依する事ができる巫女さんの力を借りて親父と喋った時に、「ビールとタバコを持って墓参りに来てくれよ」と言われていた。
※いやなんで突然そんなスピリチュアルな話しをするんだ。怖いよ!と思ったそこのあなた。
詳しくは、2025年8月20日更新の第7回「死んだ親父と話した日」をご覧下さい。
そして親父の人物像を更に詳しく知って楽しみたい方は『中1、一人暮らし、意外とバレない』を読んでみても良いかもしれません。
全然映画とか2作目からでも楽しめるという方は、全然このまま読み進めても全然大丈夫です。
こんな嫌味のない告知の2連打。
流石大使だぜ。
そんなこともあり、親父のお世話になった居酒屋の大将にも時間がある時顔を出してくれと言われてたのと、お墓参りをしないといけないという使命をこの空き時間で果たす事にした。
まずはお墓参りに行くために、缶ビールとタバコを買いにコンビニに寄る。
不思議なものでそんなに一緒に過ごしたわけでも無いのに、なぜかビールの種類やタバコの銘柄を覚えていた。
ただビールは一缶だけで良いのか、それとも乾杯用に二缶買った方が良いのか悩む。
まあでも1人で飲むより、乾杯した方が良いかと思い一応二缶買った。
あんたの息子はそこまで配慮できる良い男だよ。
墓地に到着して、お墓を掃除して雑草をむしる。
ある程度綺麗にし終えたところで、缶ビールを開けて乾杯する。
マナー上よくわからなかったのでタバコは火を付けずに、置くだけにした。
なんとなく親父に「おい!火付けろよ!」と言われた気がしたけど、「令和のマナーの厳しさなめるなよ!」と強めに言い返した。
大使になったことや近況の報告をある程度した後で、ふと我に返る。
ちょっと待てよ。お墓に缶ビールとタバコを置いて喋るってヤンキー漫画のワンシーンすぎるだろ。
『クローズ』でこんなの見たことあるぞ。
小っ恥ずかしくなり、ほどほどに挨拶をして帰ることにした。
きっと親父も可愛い女の子の1人でも連れてこないならさっさと帰れと思っていただろう。
少し時間を潰してから、親父の知り合いの居酒屋さんに向かった。
1年前に番組のロケで来た以来だ。
昔ながらの趣のある外観のお店で、中に入るとしゃがれ声の大将が「おぉ久しぶりだな」と挨拶をしてくれた。
大将の見た目はめちゃくちゃ強面で、割烹着を着ていなかったら完全にそっちの人だ。
「確認なんですけど、大将って反社の方じゃないですよね?」
とオープニングジョークをかます。すると、
「バカ野郎すがちゃんが生まれる前から料理人やってるよ」
と笑いながら返してくれた。
ちなみにオレの親父の事も「すがちゃん」と呼んでいて、オレが「すがちゃん」と芸名を付けていたので大将的には世襲制みたいになっているそうだ。
親父と大将は古くからの仲で、お店にもよく飲みに来ていたし、営業終わりに行きつけのスナックで麻雀をしたりと弟のように可愛がっていたらしい。
大将の作る美味しいご飯とお酒を食べ飲みしながら、親父の昔話を色々聞いた。
親父は女性が大好きで血の気の多いヤンチャ野郎だったそう。
オレの知ってる親父の通りすぎるだろ。
何か一つくらいギャップあれよ親父。
ただ一つびっくりした事があった。
「いやぁ、でもお父さんと知り合ってしばらく子供がいるなんて、一言も聞いた事無かったから知った時ビックリしたよ」
おいおい。マジかよ。
親父の奴、オレの存在を伏せてたのかよ。
聞いた瞬間、なんだかモヤっとした。
なかなか言語化が難しいけど、人に言わないって事は、親父の中でオレの存在が眼中に無かったのかとか、話すほどの事じゃないのかとか、負の感情がぐるぐる体を巡る感覚になった。
「じゃあ大将はどうやって子供がいるって知ったんですか?」
どのタイミングで言おうと思ったのか、とにかく気になった。
「知り合ってしばらく経ってから突然、息子が芸人になって今ライブで優勝して凄いんだって突然ポスターみたいな写真を見せられたんだよ」
なるほど。なるほど。
確かに、その当時養成所のライブで優勝するとポスター風の写真を撮ってもらえてそれが当時のTwitterやFacebookで公開されていた。
きっと親父がそれを見つけたのだろう。
いやなんて人だ!
オレが芸人になってライブで優勝したらようやく人に話すって、現金な人過ぎるだろ!
何ちょっと人に話したら盛り上がるトピックスになったから息子がいるって言おうじゃないんだよ!
我が子の存在を隠して飲み歩いていたのと、芸人になった途端言いふらし始める親父らしさになんだか切なくもあり、だけど笑える不思議な気持ちになった。
お腹いっぱいご飯にお酒を楽しませてもらって、親父の代わりにちょこちょこ顔を出す事を約束した。
「オレより早く行っちまいやがってよ」
と大将は時折り寂しそうな顔をしていた。
親父は本当に愛されていたんだな思った。
大将に挨拶を済ませて店を出た後、店前の喫煙所で親父の墓参りのために買ったタバコに火をつけて色々と思いを寄せる。
生きているうちに大使になった姿を見せたかったと思うと同時に、どうせ親父の事だからそれをダシにやんちゃするだろうから、遠くから見守ってもらって良かったと安心する気持ちになった。
死んでから5年経っても、まだまだ楽しませてくれる親父だぜ。
色んな感情が芽生えた今年の夏。
結果、夏の事は前より少し好きになった事にしよう。






