「ウケると思った?」想像以上に殺伐としたNSCの授業には理由があった

“福田くん”“45”と呼び分けられてしまう謎
「毎年こういう奴が1人はいる」
芸人としても活動している、講師の木村祐一さんが言っていた言葉だ。ようやく、先輩たちが異常なほど厳しくしていた理由がわかった。
最初は笑わせることを教える学校なのに、萎縮させるなんておかしいと思っていた。人は普通のことをしても笑わない。だから、常識はずれのことをして笑わせようとする。伊藤が野々村さんの授業だけ失敗をしたなら、クビになったことには同情する。
でも、伊藤は遅刻や忘れ物も多かった。この学校は、プロの芸人を育てる場所だ。時間を守らなかったり、常識はずれのことをして人に迷惑をかけていたら、仕事にはならない。そう考えれば、クビにされたのも致し方ない。それに比べて、同期の竜也は上手だった。桝本先生の授業で、選抜に入れなかった竜也は、勝手に選抜の授業に潜り込んだ。
「何してるんだ」
「忍びの者です」
ただ忍んでいただけではなく、竜也は忍者の格好をしていた。これにて、見事に選抜入り。竜也の非常識な行いは、ボケとして受け入れられた。ボケとは何か。ツッコミとは何か。自分なりに考えた。ボケは間違ったことをするほう。ツッコミは間違いを正すほう。
間違ったほうの究極は何か。正しいほうの究極は何か。辿り着いた答えは、究極に間違ったほうが犯罪者で、究極に正しいほうは警察官。これだ。満を持して、ボケの犯罪者と、ツッコミの警察官がやり取りをするネタを披露した。
「ボケとかツッコミは専門用語だから。売れてる人が使うにはいいけど、45君にはまだ早いよ」
撃沈。自分なりに答えを見つけたと思っただけあって、ショックだった。それにしても、なんで番号で呼ばれたんだ? 何も悪いことはしていないはずだが。次の授業は、遠藤さんの授業。授業前は、階段に生徒たちが並んで、教室が開くのを待つ。僕の後ろにいた2人が話をしていた。そのうちの1人である山岸は、最近コンビを解散したばかり。
「解散したんだって?」
「そうなんだよ」
「誰かイイ人いるの?」
「今はまだいないかなぁ」
「アイツは?」
「笑いの感覚が違う」
1人が僕を指さして、山岸は僕を拒絶した。なぜか告白をしていないのにフラれた気分になった。授業が始まって、山岸がネタを見せると、遠藤さんは何がしたいのか意味がわからないと言った。次は僕の番だ。
「うん。いいね! やりたいことはわかるよ。クオリティは成長が必要だけど、考えてることは良いと思うよ。頑張ってね。福田くん」
最高の気分だった。今の遠藤さんの発言は、山岸も聞いている。どうだ! 見たか! 何が笑いの価値観が違うだ! お前なんかコッチから願い下げだ! もし組んでほしいと言われても、断ってやる! そう意気込んでいたものの、結局このあと組んでほしいとは言われなかった。仕方がない。アイツにもプライドがあるんだ。僕は1人で舞い上がっていた。
1つだけわからなかったのは、ダメ出しのときに遠藤さんが、“福田くん”と言ったこと。特に良い行いをした覚えもない。この学校に通うようになってから、今までのルールが当てはまらなくなってきた。がしかし、何度か授業を受けているうちに、共通点が見つかった。
それは、授業でダメ出しをされた時は“45”と呼ばれて、褒められると名前で呼ばれるということだ。
「45」は、次回5/20(金)に更新予定です。お楽しみに!!
「1日に2回も警察呼ぶコンビニある?」若手芸人の普通じゃない日常 | 「45」 | WANI BOOKS Newsクランチ!(ニュースクランチ!)
お笑い芸人・福田健悟が綴る、自伝的ファンタジー小説。フリーで活動していた福田が、いよいよ意を決して吉本の門を叩く。果たして、その面接の結果は…!?








