と言うわけで、数日後──
全米が泣くほどの運チが、
人生初のトレーニングジムに来てみた。わけですが……
やべー……
タンクトップきた兄ちゃんたちが、ひたすら重いもん持ち上げてる……。
こえーよ。間違いなく私場違いだよ。
帰りたい。今すぐ帰りたい。
よれよれの寝巻き代わりのTシャツ着てきた私は今すぐ帰りたい。
「さぁ、やるべ!」
ビクビクした私の隣で、力強くそう言ったモッちゃんは、
なんか英語の書かれたシンプルなTシャツを着ていた。
……冷静になってみてみれば、タンクトップ着たムキムキ兄ちゃんだけじゃなく、
女の人も、Tシャツのおじいさんも、Tシャツのおばあさんも居たりする。
うん。まあとりあえずTシャツは間違いではなさそうだ。
でも……
私は一抹の不安をモッちゃんにぶつけた。
「やっぱり重たいもの持ったりとかするんだよね……?」
「そりゃまあ、そこそこね。ウエイトトレーニングやるわけだから」
「え、自転車とか歩いたりとかじゃダメなの?」
「んー、たぶんそれだけじゃダメ。知らんけど」
知らんのかい。
「別に私ムキムキになりたくないんだけど私」
「あ、なんか、ならないらしいよ。知らんけど」
知らんのかい。
「だって私、パーソナルでそこそこウエイトトレーニングしてたけどムキムキじゃなくない?」
……確かに、モッちゃんはムキムキではない。どちらかというとプニプ……うん。これ以上言うのはモッちゃんの名誉のためにやめておこう。
いや、でも、例えムキムキにはならなくても……自信がない!!
「え、でも重たいものとか持てないよ! 絶対怪我するよ! 怪我する自信しかないよ」
だって私は皆さんの想像を絶するほどの運チっぷりで!
体育でも数々の伝説を残してきた女で、そんな私がトレーニングなんてムリムリムリムリムリムリムリムリムリムリ。
「じゃあ、まあ一回ここに座って」
モッちゃんは、優しい口調で、私のそばにあった椅子を指した。
私は落ち着くためにもそこに腰掛けた。と、その瞬間モッちゃんが
「はい、じゃあ立って! やろう!」
いや落ち着く時間短っ!
私は思わず立ち上がる。すると、モッちゃんが
「はい、スクワット1回!」
「……は?」
「できるじゃん。スクワット。ムリじゃないじゃん」
「…………おお」
「これね、実は私が最初にパーソナルのトレーナーさんにやられたことなんだ。
私も運動できないから、今のあんたと同じ感じだったんだよ。
でもこれやられて、
その後「運動ができない」のと「トレーニングができない」のは違うよって言われたの」
「……うん」
モッちゃんがトレーナーさんに言われたのは、無理なことはする必要はないと言うことらしい。
ウエイトトレーニングとは言っても、マシンを使えばそうそう怪我したりしない。怪我しない設計になっているから。しかも怪我するような重さ、最初から扱う必要もない。
「あとは、あんた次第」
……モッちゃん、あんた、優しいね。
そう言うところ、昔から変わんないわ。
「一回騙されたと思ってやってみよーや!」
笑顔のモッちゃん。
頼もしい。
一つ気になることがあるとすれば、
そんなかっこ可愛いモッちゃんのTシャツに書かれた英語

意味は
「絶対安静」
……嫌な予感しかしない。
後編につづく……
ちなみに10キロ痩せるまで、あと6.5キロ。
今朝起きたら体重最小値更新してた。いえい!
けど良いことがあると、次にくるのは……
やはり嫌な予感しかしない──