その瞬間、幸せはチョコレートの形をして掌にあった

薄いチョコがパリっと音をたてたら次は濃厚なチョコが歯に応えた。幸せとは今この掌の中にあるチョコレートのことだったのだ。大げさでも言い過ぎでもなく、幸せを定義するのに相応しいスイーツだ。

私が今回漂流したお店は横浜にある「VANILLABEANS」というお店。

横浜を象徴する新たな商業施設「ハンマーヘッド」の中にあるこちらのお店では、なんとチョコレートをカカオ豆の状態から作っている。
ガラス張りの作業スペースの中には大きなシルバーの機会が五台並んでおり、すべて合わせると軽自動車一台分ほどの大きさがある。

以前、カカオ豆として出荷される前、カカオの木の状態のお話をしたが、今回はカカオ豆からチョコレートになるまでをお話させていただく。

まず「ロースター」で焙煎、冷却し、カカオ豆の味と風味を引き出す。
次に「ウィノワ―」で豆を荒く砕き、皮を取り除く。皮を取り除いた身をカカオニブと言う。
続いて「グラインダー」でカカオニブを粉砕し、ペースト状にする。この状態をカカオマスと呼ぶ。
さらに「ボールミル」で粒子をより細かくし、舌触りで美味しく感じる30ミクロン以下まで粉砕する。砂糖を入れ甘みも調節する。
最後に「コンチングマシン」で酸味やえぐみを揮発させるためにチョコレートを練り上げる。最後の「コンチングマシン」から出てくるのは液状になったチョコレートである。

そんなこんなで長い時間をかけてカカオ豆からチョコレートになり、そしてさらに美味しく工夫されたスイーツを食べて見よう。チョコレートのいい香りに誘われてそろそろ我慢の限界であった。

 掌に、ご褒美の塊

まずは「ショーコラ」をいただく。
箱も、中身も飾り気が無い。モノトーンの姿からはこちらに媚びる気配が一切なく、こちらとしても期待値を上げざるを得ない。

私の掌に収まる大きさのクッキーサンドはきっと誰の手に渡っても皆の掌に収まるのだろう。

さっそく一口食べる。
サクサクとしたクッキーの間に、濃厚生チョコを薄いチョコでコーティングしたものがサンドされている。ご褒美の塊みたいな存在だ。
生チョコの濃厚な甘さとクッキーのカジュアルな風味と食感が妙にしっくりくる。

続いて「パリトロ」をいただく。

名前が物語っているように、パリ、とろがそのまま再現されている。
パリ、の部分を担うコーティングのチョコレートは分厚すぎず一瞬のパリを担い次第すぐに次のとろ、の導入へ導いてくれる。分厚すぎず薄すぎず、完璧なコーティングが成されている。とろ、の部分は濃厚な生チョコである。

断面に噛んだ跡がしっかり残るほどの濃厚さ、たまらない。

生チョコの底には生チョコと錯覚するほど濃厚なケーキ生地が寝そべっている。濃厚でありながら、生チョコとは異なるふわっとした新たな食感を担っている。

VANILLABEANSさんのスイーツはどこか現実の自分と引き離してくれる気がした。
甘くて、濃厚で、夢みたいに美味しくて、小さいのに満足感のある、中身がどうなっているのかコーティングされていて見えないという特徴はまるでアイドルみたいだと思った。