芸人へのリスペクトと愛が詰まったコンテンツを生みつづけている「株式会社TPコーポレーション東京X​​」代表取締役のTPこと、映像・音声プロデューサーの高橋雄作さん。お笑いが好きな人であれば、彼の名前を一度は耳にしたことがあるかもしれない。

高橋さんは、早稲田大学卒業後、テレビ朝日に入社し、2022年8月に独立。金属バットや板橋ハウスなど、お笑いファンやSNSユーザーが追いかけたくなる魅力的な芸人たちと一緒に“おもしろいもの”をテレビやラジオ、YouTubeなどで発信中だ。

今回、インタビューを通して高橋さんの歴史を紐解くと「好き」と「楽しい」が共存する胸のうちが見えてきた。

▲Fun Work ~好きなことを仕事に~ <映像プロデューサー・高橋雄作>

初めて夜更かしをして見た『オンバト』が原体験

――どんな幼少期を過ごされていたんですか? 

高橋 勉強も運動もまぁまぁできたし、 家庭も円満だし、エリートでした(笑)。僕のお笑いの原体験としては、小学6年生のときに少年野球の合宿で初めて夜更かしをしてテレビをつけたら、たまたま『爆笑オンエアバトル』(NHK総合)の第1回チャンピオン大会が放送されていたんですよ。そこで(ブレイク前の)テツandトモが顔芸をやってたんですけど、あのネタで腹がちぎれました。“こんなに面白い人たちがいるんだ”って。

そのあと、レギュラー回のオンバトを見たんですけど、今度はラーメンズが同じ「公園」という設定で、演じる人がどんどん変わるオシャレなコントをしていて。そこで「オンバトっていう番組はすごいぞ!」と超感動して、毎週追いかけるようになりました。

――高橋さんはクラスでも目立つタイプって感じがしますね。

高橋 中学や高校ではクラスの人気者みたいな立ち位置で、出し物とかあったときは、アンタッチャブルの漫才をパクってやったり、プラスドライバー(現:東京03・角田晃広が所属していたトリオ)のコントをやったりしていた記憶はありますね。ずっとお笑いが好きでした。

その後、早稲田に入学して、お笑いサークル「早稲田寄席演芸研究会(ヨセケン)」の新入生歓迎ライブに行ったら、めちゃくちゃ面白い人がいて。何も考えず“僕もやってみよう”とヨセケンに入りました。それからお笑いに携わるようになるんですけど、僕にはキャラがなかったんですよ。要はツッコミどころがない……万能だったから。

――(笑)。

高橋 それまでのエリート街道がフリになっているから、それが初めての挫折。すべての価値観がひっくり返りましたね。今まで良しとされていたものが、じつはつまらないんだとわかってショックでした。

――人前に立ってネタをするなかで、芸人になろうとは思わなかったのですか?

高橋 1~2年のときは全然ウケなかったんですけど、そこで学ぶからウケ始めてくるんです。ただ、理詰めでネタを作っているから天才には勝てない。

大学3~4年のときに、ワタナベエンターテインメントが主催する大学生のお笑い大会『笑学祭』で、決勝の決勝まで勝ち上がったんですけど、“絶対に優勝した!”と思ったら2位だったときがあって。作家の元祖爆笑王さんに「君らの芸は完成している。この言葉の意味がわかるかい?」と言われて、そこで(理詰めでネタをつくる)僕には無理だなと思って諦めました。

▲エリートです、と自称しても嫌味に聞こえないのはTPさんの話術だと感じた