コロナ禍でじわじわと人気が高まり、2022年8月にはタイBLドラマに出演するブライト、ウィンら人気俳優11人による、DMMTVの来日イベントが開催されるなど、日本で一大ブームを巻き起こしているタイBL。

その火付け役である『2gether』は、原作小説の日本語訳やコミカライズも発売されるほど人気を博しているが、タイBLがここまで日本で愛される理由はなぜだろうか? 紀伊國屋書店 新宿本店のコミック担当・山﨑さんに、タイBLの魅力と根強いファンについて語っていただきました。

新鮮でありながら懐かしさもあるシチュエーション

――これまでたくさんのタイBLを見られてきたと思うんですが、ここがウケてるんじゃないかと思う魅力って……どこでしょう?

紀伊國屋書店 新宿本店 コミック担当 山﨑さん (以下、コミ担 山﨑) 入口としては、やっぱりドラマになってきますが、それも作品によってかなり違ってきます。でも共通しているのは役者さんの魅力、すごいですね。

――どの作品も主役二人のビジュアルは抜群ですよね。

コミ担 山﨑 『2gether』は「好き」という気持ちが、画面からあふれるようなキラキラした青春が、見ていてすごく心地いいです。日本のドラマを見ているのとも少し違う、新しい感覚でした。新鮮なところと親しみやすいところとがあって楽しく見られるので、もしかしたら“BL”という感覚では見ていない方が多いかもしれないです。

――BL以外の要素からハマっている人が多いんですね。

コミ担 山﨑 ドラマ自体はもちろんBL要素満載です。なんですが、アジアドラマの枠組みで『花より男子』のタイ版ドラマ『F4 Thailand』が話題になったのと同じように、役者さんが気になって見てみたら、BL作品だったという方も意外と多いような感じがしますね。

――海外BLのなかでも、とくにタイBLが人気なのはどうしてですか?

コミ担 山﨑 どんな人でもがキュンとするシーンが多いことが一つかもしれません。『2gether』ではサラワットの「落ちるまでキスするぞ」とか。「これが見たかった!」と思うようなドキドキするシーンがふんだんに入っています。しかも、ドラマを最後まで見てから、こういうシーンをもう一度見てみると、初見とは違った見方ができるように作られているのもすごいなと思います。

▲コミック版『2gether』第2話より

――サラワットみたいな性格のキャラクターは、少女漫画でも王道ですよね。

コミ担 山﨑 物語の舞台も、大学生とか会社員・社会人同士の話だと、日本と文化が違うところもあるんですけど、登場人物の抱える悩みも共感できて馴染みやすいというか。ファンタジー要素もある作品もありますが、現実の世界観のなかで描かれているから、より感覚が近く馴染みやすいっていうのはあると思います。

――たしかに、タイの作品は現代を舞台にした作品が好きな方にハマったのかもしれないですね。

コミ担 山﨑 『2gether』も、ゆっくり心情を読んでいく作品になっているので、BLコミック好きとしても欲していたストーリー展開でした。1クールを通して登場人物の心が少しずつ変わっていく描写がすごく丁寧なところも、人気が出た理由だと思います。サラワットのまっすぐな「好き!」な気持ちが伝わって、二人の関係が少しずつ変わっていくところが個人的にとても好きです。

▲コミック版『2gether』第6話より

テンポよく楽しいシーンのあと、急に情感的なシーンが入ってゆっくりになるような演出の独特さもすごく魅力的に感じました。