特異な発想と孤高のワードセンス、独創的なネタでお笑いファンを魅了する異色のコンビ・ななまがり。そんなふたりが2022年より毎年開催している単独ライブ『ななまつり』は、2日間計4公演で新ネタを全28本披露するという、かなりストイックな公演だ。この取材は午後の早い時間から行なわれたが、インタビュー後、森下直人は「夜のライブまで時間があるので、このあとはネタづくりに取り掛かります」と話していた。

※本記事は『+act.(プラスアクト)2026年4月号』(ワニブックス:刊)より、一部を抜粋編集したものです。

『ななまつり』を始めてから新たな隠語ができました

――約4年前にも登場いただいておりまして、その時は『ななまつり二〇二二』のDVDについてお伺いしたんです。

初瀬:そうですよね。嬉しかった記憶があります。

――ありがとうございます。そんな『ななまつり』も今年で5年目ですね。

初瀬:続いてますねぇ。えらいもんで、やり終えた時の手応えから(単独を)やめるのがもったいなくなっているというか。僕らにとって残るものがめっちゃあるんで、体が元気なうちはやっておきたいなと思ってます。

森下:取材してもらった2022年は新ネタ28本を単独でやるのも初めてで効率もわからないですし、どうやったら間に合うねんってピリピリしてケンカもしました。けど、年を重ねていくと、これくらいにはネタができとかんとあかんなという感覚がわかって、どんどん成長している感じはあります。

――前回は4カ月前からネタづくりに取り掛かっているとお話しされていましたが、今も変わらずですか。

初瀬:そうですね。そこは変わってないです。

森下:年を重ねるごとに忙しさも増す中で、この時間にこれをやろうという時間の見つけ方もうまくなってきました。ゼロからイチをつくるのはお休みの時じゃないと無理ですけど、イチが出てるネタに関しては劇場の合間でやろうとか。

初瀬:『ななまつり』を始めてから新たな隠語ができました。『今日はゼロイチの日』とか、前は言うてなかった気がするんです。ゼロイチが一番時間かかるので。それを考えるのは森下なんですけど、劇場合間の1時間でいいアイデアを出すのは結構大変やと思うんで。

森下:ゼロイチは僕の体力がマックスじゃないと無理ですね。ある程度できているものに対して考えるのは、組み立てる作業なので少し疲れてる頭でもできるし、舞台に何公演か立って気持ちが乗ってる状態のほうが出やすかったりする。けど、ゼロからイチを生む作業は、空っぽじゃないとできない感じがあります。例えば夜だけライブみたいな日があれば『午前中からゼロイチしようか』とか、そういう使い方をしてますね。

――ネタを全部覚えなきゃいけないですし、稽古も必要ですからすごい労力ですよね。覚える期間にネタをつくることもあるでしょうし、稽古しながら修正もあるでしょうし、どうやって頭を整理しているんですか。

森下:火事場のバカ力に頼っているところもあります。初年度の単独に来てくれた人にどのネタがよかったかをアンケートで投票してもらったんですけど、各公演の1位が締切日最後にできたネタやったんです。初瀬は準備をしっかりするタイプなんですけど、僕は全ての物事において切羽詰まらないと動けなくて。それが影響してるのかもしれないですけど、追い込みの時のほうがいいものができる気がします。

『森下さんから謎のお金をもらった』

――森下さんは4年前、ネタづくりでノイローゼになりそうだったとも話されていました。

森下:あの時は胃に炎症を起こして、ライブの出番前に痛くなってのたうち回りました。その日、NSCを首席で卒業して初めてライブに出る後輩がいたんです。なのに十何年先輩のそんな姿を見せて申し訳なくなって、そのふたりに1000円ずつ渡しました。

初瀬:それが神保町(よしもと漫才劇場)で噂になってました。『森下さんから謎のお金をもらった』って(笑)。

森下:ヤバい人やと思われたみたいです。

――そうはなりつつも、最初に初瀬さんが話していたように単独を終えた瞬間、何物にも代え難い達成感があったと。

初瀬:そうですね。テレビであったり賞レースであったり、将来的に使えるネタがめっちゃ生まれるんですよ。ネタに限らず、この番組でこのキャラクターが使えそうとか。単独をやることでいろんな仕事に対応できるようになりました。

森下:基本、テレビのスタッフさんからは『変なキャラクターでお願いします』という発注が多いんです。僕ら的にも新しいキャラを出したいし、『新しいキャラでお願いします』とも言われるんですが、そういう時に(単独でやったものが)出せるんですよね。

初瀬:幕間VTRも4公演全て違うので、その全てが僕らの戦力になってます。お陰で、他の芸人にちょっとやそっとでは負けへん感じにはなれてる気がするんですよね。

森下:立ち止まってない感が明らかですよね。逆に言うと、しばらくはやめられないんじゃないかっていう。

初瀬:その恐怖はある!

森下:単独をやめて、『あれ、この人ら最近おもんなくなったな』とか思われ
たらな?

初瀬:最っ悪です!

――ちなみに、4公演のネタの振り分け方はどうやって決めているんですか?

森下:基本、初瀬に任せてます。出してくれたものを見て、僕は『オッケー』とか『これどうなんかな』って言うくらいです。

初瀬:28本のネタが出揃ってから考えるんですけど、僕の中でのバランスがあって。設定かぶりまではいかなくても、例えば食べ物を使ったネタとか茶髪のヅラを使うネタとか、似たように見えるものってあるじゃないですか。あとはネタの性質。森下がむちゃくちゃやる系、森下がしっかりした系、初瀬メイン系とかあるので、あらゆる要素からバランスを見て考えてますね。

森下:初瀬は結構マメな性格なんです。僕はそういうことに関してガサツというか、直前にならないとやらなくて。初年度はふたりで考えて意見が割れたりもしたから、今は初瀬に全部任せています。それで、改めて初瀬ってマメやな、すごいなと感じたことがあったんですよね。昨年の『ななまつり』かな? スタッフさんから『DVDのパッケージをいくつかつくりました。どれがいいですか』っていうLINEが来たんです。デザインを見てほしいっていう内容で、僕はパッと見てどっちもええなと思ったのであえて返事をせず、初瀬の意見に乗ろうと思っていたんです。そのあと初瀬から返事があったんですけど、『ごめんなさい。デザインより、これとこれとこれのネタが入れ替わってます』っていうもので。ネタ順合ってますか? っていう確認の連絡やったらわかるんですけど、(仮デザインの段階で)めちゃくちゃ小さく書かれてるネタ順まで細かく確認してたんですよ。

初瀬:なんでなんでしょうね。見ててあれ? ってなったんやと思います。どの公演でどのネタをどの順番でやるかはめっちゃ考えた上で決めてるんで、気になったんやと思います。

ななまがりさんへのインタビュー記事は、発売中の『+act. (プラスアクト) 2026年4月号』に全文掲載されています。