大阪で芸歴をスタートさせ、漫才師として着実に活動し続けているからし蓮根が、この春東京へ拠点を移した。5月には渋谷よしもと漫才劇場にて、上京後初となる単独ライブ『火の国Start』を開催。

現在は地元の熊本を含む6都道府県を回る全国ツアー『火の国HOT』の真っ只中だ。さらに、7月末には芸名をそれぞれ「伊織ラッキー」「青空(そら)」と改名するなど心機一転。現在、芸人は舞台やテレビのみならず、YouTubeやラジオアプリと自らの個性を発揮する場所を多く持っているが、ふたりが新天地で目指しているのは『M-1グランプリ』での優勝と全国区のテレビ進出だと言う。とは言え、ネタはリアリティと楽しさをモットーとするなど、マイペースに語るふたりの姿が印象的だった。

※本記事は『+act.(プラスアクト)2025年10月号』(ワニブックス:刊)より、一部を抜粋編集したものです。

東京はいろんな仕事がありますよね

――上京して数カ月経ちました。東京での暮らしには慣れましたか?

青空:そうですね。漠然としていますけど、毎日楽しいです。

伊織ラッキー(以下、伊織):東京はいろんな仕事がありますよね。大阪も広いと思ってましたけど、東京に来てもっと広いなと感じています。

――例えば、どんなところでそう感じているんですか?

伊織:僕、犬を飼っているんですけど、犬の雑誌の取材を受けたりとか、どんな家に住んでいるんですか? っていう取材を受けたり。

青空:あぁ、どんな家に住んでるかっていう取材、確かにありましたね。

伊織:いろんな取材をしてもらえるようになりました。営業先も大阪にいる時は関西近辺とか九州が多かったんですけど、こっちに来て長野とか今まで行ったことがないところに行けるのも嬉しいです。プライベートでも、東京に住んでいる芸人さんと遊ぶことが多くなって。そういうところも楽しいですね。僕、シカゴ実業の山本(プロ野球)さんとダンビラムーチョの大原(優一)さんと3人でルームシェアしてるんですけど、飼っているワンちゃんが大原さんに噛みつきまして。今は仲よくなっているんですけど、3人での暮らしは何かしら事件が起きてますね。

青空:そうなんや。プライベートは…なんやろ? 僕、モーニング娘。さんが好きなんですよ。この前、マユリカの中谷さんに誘ってもらって武道館のライブを初めて観に行きました。関係者席に有名な方もたくさんいて、あの時は“うわぁ、東京に来たんやなぁ”って実感しましたね。

――5月には渋谷よしもと漫才劇場で、上京後初の単独ライブも開催されて、現在はツアーの真っ只中ですね。

青空:渋谷での単独ライブも盛り上がってもらえて。

伊織:全国ツアーは昨年も行かせてもらったんですけど、今年も『M-1』に向けてやっていこうかなというところもありますね。

青空:『M-1』に向けていい漫才ができたらというところと、プラス普通にいろんな人に僕らの漫才を観てもらいたいという思いもあって全国ツアーをやっています。今年は8月から11月までと開催期間も長いので、その間に新ネタも入れていくでしょうし、ネタのブラッシュアップもしつつ回れたらと思っていますけど。

伊織:昨年のツアーでは結構内容を変えましたからね。

青空:基本は一緒で、1、2本変えたり変えなかったりみたいな感じになると思います。やから何回観ていただいても楽しんでもらえるはずです。

伊織:で、地元の熊本からどんどん北に上がってくるスケジュールにしていて。最後は東京なんですけどね。

青空:北海道はちょっと別やけど。

伊織:そうですね。北海道で単独をやるのは初めてなんですけど、今までもちょいちょいライブでは呼んでもらっていて。今、北海道はお笑いが熱くて、観に来るお客さんが増えているらしいので(お客さんの)反応も楽しみにしています。

喫煙所でおじさんに気づかれることも多いです

――ちなみに、お客さんはどういう層が多いんですか?

伊織:僕らはどっちかって言うと男の人が多いです。街を歩いていても、男の人に声を掛けられるほうが多い気がします。

青空:確かに。声を掛けてもらうのは嬉しいですね。男子高校生に声を掛けられることもよくありますし。

伊織:『ネタ見てます』って。喫煙所でおじさんに気づかれることも多くて、そういう時は喫煙所で一緒に写真を撮っています。

――ネタづくりはライブがあるからつくるのか、それともいつでも考えているのかどちらですか。

青空:僕がネタを書いてるんですけど、わりといつも考えているというか、ライブのあるなし関係なく、ずっとつくっている気がします。で、ふたりでやりながらさらに詰めていくんですけど、昔は相方に細かく『こういうふうにやってほしい』と言っていたことも結構あったんです。けど、今はとりあえずネタを書いてふたりでやってみて感覚をつかんだら、それを元にちょこちょこ変えていくことが多い。絶対にここはこれで! みたいなことはなく、無理ない感じというか。リアリティがあるのが一番やろうなというところから、今の感じになっていったんですけど。

伊織:僕が好んでネタ合わせをやらないというか、よくネタ合わせをサボるんです。

青空:あはは! そのお陰で、変な筋肉がついたのかもしれないですね。

伊織:はい。どうやったらうまくサボれるか、どうやったら早く(台本を)覚えられるかを13年探究し続けて、この形になりました。

――芸人を始めた当初から、伊織さんはネタ合わせが好きじゃなかったんですか?

伊織:そうですね。ちゃんと不機嫌になるというか、ネタ合わせの空気に耐えられなくなるんです。なので、舞台上がネタ合わせの場にもなっている感じで。

青空:僕はそんなんも見越してネタをつくるようになりました。今はだいぶ感覚がつかめたので大丈夫になりましたけど。例えば、絶対にテンション高くないとあかんみたいなところは入れなくなりましたし、(相方が)どの精神状態でも70%くらいはウケることを想定してつくってるところはあります。ネタ合わせはやっても1回、2回が限度じゃないですかね。前はもうちょいネタ合わせやっとこうみたいな雰囲気もあったんですけど、今は伊織が『やろう』って言ったらやる感じになりました。

伊織:ライブ前、みんなと楽屋で喋ってるんですけど、それぞれネタ合わせしに行くから周りに誰もいなくなっていって寂しいんです。かと言って、自分らもネタ合わせをするかっていうとそうじゃない。たくさんネタ合わせをするコンビもいますけど、それは僕には無理です。

青空:こんな感じなんで、マジで伊織が5分間黙ってもなんとかできるくらいの想定はしてつくってますね(笑)。

からし蓮根さんへのインタビュー記事は、発売中の『+act. (プラスアクト) 2025年10月号』に全文掲載されています。