新規ラーメン屋の3割が潰れている現実

俺はラーメン屋として、決して成功した人間ではない。順風満帆だったことなんて、一瞬たりともなかったし、それは今でもずっと続いている。

いろんな人から「ここを、こうしたほうがいい」とか「川田さんは、何も分かっていないよ」と忠告されたこともあったけど、アドバイスされることは既に分かっていることだし、どれも試したことだってある。それだけラーメン屋は簡単じゃないんだ。

ただ、ひとつだけ間違いなく忠告できること。それは「俺みたいに意地だけは張るな!」である。

この世界の厳しさを裏付けるために、ここであらためて確認しておきたいのは、新規ラーメン店のその後だ。

「新規で立ちあげたラーメン専門店の3割が1年以内に消える」

リサーチ会社によっては「4割が潰れる」としているところもあるが、共通している数字は「3年以内に8割以上のラーメン専門店は消える」ことだ。

▲新規ラーメン屋の3割が潰れている現実 イメージ:PIXTA

つまるところ、ラーメン屋を独力で立ち上げたとしても、3年後に残るのはたった「2割」にも満たないという現実だ。ただ、逆説的に考えると「8割」の人の傷は浅かったかもしれないし「やめる勇気」があったのかもしれない。

うちもオープンから1年が経過した時点で店を畳んでおけば、ダメージは最小限で食い止められたんだ。

でも、俺はそこで意地を張ってしまった。ここで終わるわけにはいかない、店を潰すわけにはいかない、と。これはある程度、名前が売れている人間が抱えてしまうジレンマかもしれない。

一般の方なら、店を潰してしまっても、ごく一部の人にしか知られることはないけれど、俺の場合「川田がたった1年で店を潰した」と世間に知られてしまうからね。そうなるとやっぱり意地を張りたくなっちゃうんだよね。下手に顔と名前も知られてしまっているから、転職をするのもいろいろと難しいんだ。

となると、店を畳んだとしても、また何か自分で事業を始めなくてはいけない。だったら、すでに1000万円以上も投資してしまった、この店を存続させることを考えたほうがいいのではないか?

そう考えて、俺は意地を張ってしまった。意地を張るって、簡単に思えるかもしれない。ひたすらギブアップしなければいいんだろう、と。

プロレスではそうだった。骨が折れてもギブアップしなければ負けにはならないから、俺はリングの上でめいっぱい意地を張りまくった。

俺にみたいに「意地」だけは張るな!

でも、ビジネスの世界では違う。店を維持しようとしたら、とにかく金がかかる。つまり『意地を張る=金を遣う』なのである。

いや、正確には『意地を張る=必要以上に金を遣う』。つまり、意地を張れば張るほど、精神的にも経済的にもボロボロになっていくのだ。だから、これから起業を考えている人には、とにかく意地だけは張ってほしくないのだ。

俺みたいにベンツを売却し、保険を解約してまで、店を続けていくのはけっして得策ではないし「ダメだ」と感じたら、早めにギブアップしたほうがいい。

起業する前から失敗することを考えるなんて縁起でもない、という方もいるかもしれないけれど、成功するなんていう「夢」を見るよりも、ひょっとしたら失敗するかもしれないという「現実」に向き合えなかったら、俺みたいに無駄に意地を張って、苦しむ未来しか見えてこない。

だから、絶対に意地だけは張るな。

意地を張らずにギブアップをする勇気がない、という人は、そもそもラーメン屋をやろうなんて考えてはいけないんだ。