21 世紀になってからの日米関係の動向

小泉純一郎首相時代の日本外交は、アメリカのブッシュ政権にひたすら従順に徹し、そのかわりに、北朝鮮訪問だけは許してもらった感がありました。中国とは最悪で、ヨーロッパを含めた他の国と良かったわけでもありません。

民主党政権は、オバマ政権とは相性が良いかと思われたのですが、普天間基地問題で「トラスト・ミー」と言って何もしなかったし、日米中の正三角形とかいう同盟国をないがしろにした世界観では話になりません。ただ、東日本大震災のときの「トモダチ作戦」でアメリカとの絆が深まったのが唯一の救いでした。

▲第44代大統領 バラク・オバマ 出典:ウィキメディア・コモンズ

安倍首相(当時)とオバマ政権の関係の滑り出しは、それほど良好ではありませんでした。とくに、安倍首相が「戦後レジームからの脱却」を唱えていたことは、悪くとらえられかねない危惧がありました。また、このころは欧米の中国への警戒感が不十分でした。いずれ民主化を進めるだろうから、世界平和の脅威にはならないという楽観的なムードでした。

しかし、オバマ・習近平はかみ合いませんでした。一方、安倍首相も2014年の寿司店での会談では、ビジネスライクなオバマとあまり波長は合わなかったともいわれました。しかし、辛抱強い信頼関係構築が実って、2015年の米国議会での演説で、安倍首相に対するアメリカ政界の疑念はほぼ解消したと言って良いと思います。

ここで示された歴史観は、アメリカの保守派にもリベラル派にも受け入れられ、日本国内の保守派もそこそこ満足させ、リベラルや左派も文句を言いにくい絶妙なものでした。

そしてトランプが当選すると、トランプ・タワーを訪ねて意気投合し、一方で、オバマ大統領の広島訪問に応える形での真珠湾訪問でバランスも取りました。

ヨーロッパなどの論調を見ても、安倍首相がトランプ大統領と無駄な対立はせずに、訪日の際などに思いっきり持ち上げ、気まぐれからくる問題の被害を最小限に留めているのは賢いと評価されています。また、中国とどちらが同盟国として大事かというのが議論にならなくなったのもうれしいことです。

ただ、中国の台頭の結果、アメリカの力が圧倒的であるという前提を立てられなくなっているわけで、西太平洋地域でも、日本・インド・オーストラリア・英仏独などが力を合わせないと中国には追いつきません。少なくとも、そういう新しい状況に見合う犠牲を払う覚悟を固めるべき時代になったことを、日本国民は認めるべきだと思います。

※本記事は、八幡和郎:著『アメリカ大統領史100の真実と嘘』(扶桑社:刊)より一部を抜粋編集したものです。