21世紀における米中関係の動向
ニクソン訪中ののちも、アメリカの歴代大統領たちは、キッシンジャーほど割り切って実利的に外交を考えたわけでないので、和解は簡単に進みませんでした。むしろ、日本が贖罪感と実利の両方の観点から積極的に接近し、鄧小平の改革開放に知恵も出しました。
天安門事件では、欧米が批判的だったのに対して日本は、発展途上において政治の安定も大事だとそれなりの理解を示し、国際社会への復帰を助けもしました。
アメリカは、表面的には厳しかったですが、ブッシュ大統領(父)が北京代表事務所長経験者でもあり、批判は抑制的でした。クリントン大統領と江沢民の時代になると、日本がバブル崩壊と政治混乱で身動きが取れないなかで、急速な接近をし、第2次世界大戦の同盟国であることを双方がアピールしました。
21世紀に入ると、世界経済が不振であるなかで、中国の経済成長や生産力が世界経済の救世主となり、欧米の政財界人は中国詣でをしました。膨大な中国人留学生がアメリカの大学で学びました。2010年にはGDPで中国が日本を抜いて世界第2位になりました。日本では中国はいずれダメになると言う人が多かったのですが、私はあと2世代くらい大丈夫だと言い続けていました。堺屋太一さんなども同じような意見でした。
そして、私はアメリカ人などに、日本・ソ連・ドイツはアメリカを抜くことは考えにくいナンバーツーだったが、中国はナンバーワンになるから対策を取れと言ってきました。
アメリカが危機感をもったのは、オバマ政権末期です。2015年に北京で行われた抗日戦争勝利70周年の軍事パレードは、ナチスや赤軍を想起させるものでした。「太平洋は米 中両大国にとって十分に広い」などというのをアメリカが許すはずがありません。
「一帯一路構想」は、日本の「大東亜共栄圏」のより壮大なかたちでした。「西太平洋はおれの取り分」などということをアメリカが許してくれていたら、太平洋戦争もなかったのですから、日米戦争の歴史から学ぶべきは中国でしょう。
トランプは、人権問題では民主党政権より現実的です。そのかわりに、中国から利益を得る決意は確固たるものですし、HUAWEI問題では、アメリカの技術を盗用している、 主導権を取ろうとしている、IT機器を通じて情報を盗んでいると責め立てました。
中国としては、習近平の「強国」路線に基づく派手な外交で、もう少し潜って力を蓄えるべきところを馬脚を現してしまったことが悔やまれるでしょう。
※本記事は、八幡和郎:著『アメリカ大統領史100の真実と嘘』(扶桑社:刊)より一部を抜粋編集したものです。