金髪ロングにピンクのラメ入りホットパンツ、厚底ブーツという独特な出で立ち、そしてリズミカルなセリフ回しと、誰も真似できないシュールなフリップ芸で注目を集めている異色のピン芸人・ZAZYが『R-1グランプリ2021』で2位となってから初となる単独ライブを開催する。誰とも混じり合わない切り口で孤高の地歩を確立しつつある彼に、単独ライブのこと、ピン芸人のこと、今後の目標などを聞いた。

現在、YouTubeで単独当日まで2021時間の生配信ライブを敢行中と、5月18日から8月10日の15時まで、自宅からYouTubeで2021時間にも及ぶ生配信という信じられないような企画を敢行している。このインタビューページにあなたが目を通しているまさに今も、ZAZYは配信を続けているのだ。ぜひ「ZAZY 生配信」で検索して、実際に見ていただきたい。

※本記事は『+act.(プラスアクト)2021年8月号』(ワニブックス:刊)より、一部を抜粋編集したものです。

人とカブらないように意識してずっとやってきたんです

――『R-1グランプリ』後に開催予定だった単独ライブは、緊急事態宣言で中止としたんですよね。

ZAZY 最悪でしょ? けど、最悪ですって言うだけで何もしないわけにはいかないので、延期してグレードアップした単独ライブを8月10日にやることにしたんです。無観客でやることも考えはしたんですけど……のらないんですよね、自分のパフォーマンスが。だったら一旦、全て白紙にして、もう一度ネタも考え直すことにしました。

――しかも、5月18日から単独ライブまでYouTubeで2021時間生配信を行なっているんですよね。今日も取材前チラッと覗いたんですけど、ZAZYさんが寝ている間も60人くらいが見ていました。なぜこんな大変なことをやろうと思ったんですか?

ZAZY なんなんでしょうねぇ? 昨年も1000時間配信をやったんですけど……大変なことをやるのが癖になってるところはあるのかもしれないですね。ZAZYっていう名前をつけてから、手垢のついてないところへいくっていうか、人とカブらないようにっていうことを意識してずっとやってきたんです。フリップ芸も、ピン芸人になった当時、みなさんがやってるのはコントとか漫談で、やっている人が少ないっていう理由で始めましたし、こんな厚底ブーツを履くようになったのも誰も履いてなかったからなんです。

けど、実際にやってみると、フリップ芸って絵を描くのも大変ですし、持ち運ぶのも大変なんです。厚底ブーツも歩きにくいし、持ち運びも大変やし、収納場所も必要。しかも、衣裳代も結構かかるんですよね。で、気づいたんです。人がやってないことをやろうと思ったら、大変なことをすればいいんだと。

――手間や苦労が多いから、誰も手をつけてないんだとわかったんですね。

ZAZY 楽でいいものって全員やってるから、オリジナリティーを出そうと思うと苦労するんです。もちろん色を変えることはできるんでしょうけど、“あいつ、同じことやってるわ”とか“あの人みたいやなぁ”みたいなことを言われてしまう。そういうのもあって、大変なことを選んできたことで、大変なことだと思うことに対する抵抗もなくなってきたのかもしれないです。

――とはいえ、大変ですよね? プライベートが一切ない生活をしているわけですから。

ZAZY めちゃくちゃ大変です! プライベートは外に出ているときとお風呂、トイレだけ。だから、お風呂と劇場の楽屋が楽しくてしかたないです。

――お風呂も長めに入ったり?(笑)

ZAZY そうです、そうです。シャワーだけで済ませず、ちゃんと湯船に浸かるようになったからなのか、寝付きが良くなって前より眠れるようになりました。1日のスケジュールも伝えているので、テレビを見過ぎることもなければ、Netflixを見ながら夜更かしすることもない。もし夜更かしするなら、前日に告知しないとダメなんで、生配信を始めてから規則正しい健康な生活を送れるようになりました。

チケットを一番売ったっていう結果が欲しいんです

――配信の目的は、オンラインチケットの売り上げ1位なんですよね。

ZAZY おぉ、よくぞご存知で!

――(笑)。配信中、うしろの壁に目標を掲げていたのを見ました。

ZAZY 単独ライブでの売り上げ1位を目指してるんです。現時点での1位は7300枚。普段、音楽やアイドルのライブ、舞台を見ている人からすれば、大したことがない数字かもしれないですけど、(活動拠点である)ヨシモト∞ホールは200人くらいで満席なわけですからね。その何倍もの人達に見てもらわないといけないんです。

――1位にこだわるのはなぜですか?

ZAZY その収益でいろいろとやりたいことがあるからです。例えば100万円くらいする新しい衣裳を買ったり、千疋屋のメロンをいっぱい買って、吉本の上層部の方々や部署の一番偉い人に『ZAZYをよろしくお願いします』って配ったりしたい。ただメロンを渡しに行っても媚びてると思われるだけなので、吉本の単独ライブのオンラインチケットを一番売ったっていう結果が欲しいんです。面白い単独をやるのはもちろんですけど、その実現のために2021時間生配信もやってます。

――そんな大きな野望があったんですね。単独に向けてのネタ作りは進んでいますか?

ZAZY ぼちぼちかなという感じで、6月の半ばから本格的に台本を書いて、絵を描くっていう作業をやっていくと思います。単独では大体1カ月くらい前から取り掛かるんですけど、いつも完成がギリギリになってしまうんですよ。僕の使ってるフリップはだいぶでかいので、絵を描いてA3で4分割にしたものを印刷して(厚紙に)貼らないといけない。貼るときも、端の白いところを全部切ってから糊づけしないといけなくて。1ネタでアベレージ40枚なので、単独で7本のネタをやるとなると280枚になっちゃって。

――かなり大変な作業ですね。しかも、フリップがないと成り立たないので、手直しもやりにくいというか。かっちりとネタを決めてから絵を描き始めないといけないでしょうし。

ZAZY そうなんです! 普段はもうちょっとこうしたらいいかもしれないと思っても(描き直すことを)サボってしまうんですけど、大事なときは描き直します。例えば『R-1』のときは、ネタを全部作ってから、ちょっと待てよと。この主人公の唇、もうちょっと分厚いほうが面白いなと思ったので、全部描き直しました。

ZAZYさんへのインタビュー記事は、7月12日発売の『+act. (プラスアクト) 2021年8月号』に全文掲載されています。