『女芸人No.1決定戦 THE W 2020』のチャンピオンとなったピン芸人・吉住が、ベストネタ集DVD『せっかくだもの。』を発売。ピン芸人としての約5年間で披露した初期・中期・後期のコント9本が収められたDVDの話を中心に、コントの根元にあるものから、これからのことまで語ってもらった。

※本記事は『+act.(プラスアクト)2021年5月号』(ワニブックス:刊)より、一部を抜粋編集したものです。

作品として形に残したかった。

――DVDを出すのが目標のひとつだったそうですね。

吉住 一時期、どこに向かっているのかわからなくなったことがありまして(笑)。そのとき、例えばラジオをやるだとか、文章を書いてみたいだとか、いろいろとやりたいことを考えたなかに、DVDを出したいっていうのがあったんです。自分が面白いと思っているコントの方々は皆さん出されていますし、作品として形に残したかった。だから、箔がついた感じがしてすごく嬉しいですね。

――この目標は早めに叶いましたか? それとも、やっとという感じですか?

吉住 やっとという感じもありますし『THE W』で優勝したら、こんなにすぐ出せるんだっていう驚きもあります。...... Wikipediaで自分のプロフィールを見ると、自分で言うのもなんですけど、いい番組に出させてもらっているんですよ。ただ、(発売元の)コンテンツリーグさんには申し訳ないですけど、売れねぇんだろうなって思ってます(笑)。

――そんなことは!(笑) 収録されているコントは、ご自身で選ばれたものなんですよね。

吉住 後期・初期・中期っていう流れで3本ずつ並べました。最初は初期から順番に並べようかなと思ったんですけど、初期を見返して、あれ? 私、人にトゲを向けてるなっていうか、まろやかさがないっていうか。あのころ、やさぐれてたんでしょうね。

自分ではそういうつもりで作ってなかったんですけど、セリフ回しとかが強過ぎるかもしれないと思いまして。それに、そのころのコントを頭に持ってくると『THE W』で知って買ってくださった人はびっくりしちゃうだろうから、親しまれている3本から入って初期、中期と入れることにしました。

――たしかに、いろいろと刺さるセリフ回しはありましたね。

吉住 そうですよね? 凄く思想が強い人みたいに見えますけど、無知なだけでそんなつもりは全然ないんです。第3回の単独ライブを劇団ひまわりさんの小屋でやらせていただいたときも、私、劇団ひまわりさんがどういうものなのかよくわかってなくて、子役のことをネタにしてしまいまして。地下に楽屋があって、やたら子どもがいるなぁとは思ってたんですよ。

――あぁ、根本から知らなかったんですね。

吉住 公民館的な感じで使われているのかなと思っていて......あれは本当に申し訳なかったですね。

――DVDの収録で過去のコントもやってみて、改めて感じたことはありましたか?

吉住 ライブ形式の収録で、着替えながら次々とコントをやっていったんですけど、衣裳を手伝ってくれた元相方のかわえなつきに『私って頑張ってたんだなぁ』って言っちゃったんですよ。全部、好きなネタだなぁって思いましたし、なっちゃんも『頑張ってたんですよ』って返してくれたのが嬉しくて。改めてやってみても楽しかったですね。

初期の『依存症』は、コンビのときにやっていたネタをピン用に変えたものなんですけど、このネタができたことによってネタの方向性というか、こっちの方面で行くんだろうなっていうネタを書くコツが、ちょっとつかめたように感じたもので。あと、初期の『アイプチ』は、初めてテレビに出られた『新しい波24』っていう番組のディレクターさんが気に入ってくださったネタ。初めてテレビに出られたネタだったので入れたんですけど、DVDに入っている設定ではやっていないので、ぜひ楽しんでいただけたら嬉しいですね。

――引っかかったことや興味を持ったことをメモに残しておくそうですが、ネタ作りはそこから広げていかれるんですか?

吉住 そうなんですけど、毎回どうやってネタを書いてたっけ?ってわからなくなっちゃうというか。例えば、港町で食堂を営んでる女の人っていうのを、ずーーっとやりたいなと思いながら、まだ形にできていなかったり。誰かをずっと待ってる女の人や、過去に何かあったんだろうなって思う女の人をやりたいな、とフワっとしたところから考え始めることもあります。

あと、DVDに入ってる『許されざる恋』っていうネタは、道端に貼ってある議員のポスターを見て無所属ってなんか気になるな、面白いなって思ったところから政治用語に興味を持ってパッとネタが書けました。『たっちゃん』は、森山直太朗さんのアルバムをシャッフルしながら聞いてるときに、いい曲だなと思ってリピートし続けていたら、うわーっとネタが降ってきました。

――へぇ、すごい。想像力を掻き立てられたんですね。

吉住 ただ、その感じで書けたのは2本だけですね。中島みゆきさんが好きなんですけど、曲を聞きながらネタを書いたときは、最終的に舞台上でカチカチの米を食う展開になってしまって。

――あははは! それ、すごく見たいです。

吉住 個人的に好きなネタなんですけど......。パーパーのあいなぷぅが(そのネタをやった)単独を見に来てくれたんですけど、あのネタだけはマジで意味がわからなかったって言ってました(笑)。

――思いつくまでに、いろんな思考のパターンがあるんですね。

吉住 そうですね。人からもらった設定はやりたくないっていう変なこだわりもあって。一度、岡野(陽一)さんに、なんか似合いそうだなって言われて作ってみたネタがあったんですけど、なんかズルしたみたいな気持ちになっちゃって......。もちろん、やれって言われたわけではないんですけどね。

ラバーガールの飛永(翼)さんには、営業でご一緒したときに『吉住さんは、ほかの人に書いてもらったネタをやってみたら? 自分が知らない自分の魅力が見つかるかもしれないよ』とも言っていただきました。それくらいの柔軟性があるほうがネタの幅は広がるだろうなって理解はできるんですけど、まだ踏み込めてはいないですね。

吉住さんへのインタビュー記事は、4月12日発売の『+act. (プラスアクト) 2021年5月号』に全文掲載されています。