淡々とした独特な会話の中にも、人間味が感じられるコントや漫才で注目を集めるロングコートダディ。『キングオブコント2020』でファイナリストになるなどコント師としてのイメージが強いが、『M-1グランプリ』では一昨年、昨年と準決勝まで進出。早くからネタが面白い芸人として名を挙げられてきた存在だが、活躍の場が広がりつつある今も本人たちはマイペースそのもの。自らが楽しめることや面白いと思うことを追求し続けているようだ。

※本記事は『+act.(プラスアクト)2021年10月号』(ワニブックス:刊)より、一部を抜粋編集したものです。

ベストネタではなく“単独”をDVD化した理由

――12 月に発売される『じごくトニック』は、初めてのDVDなんですよね。

堂前透(以下、堂前) 僕はDVDを見てきた世代で。ラーメンズさんとかバナナマンさん、東京03さん、ザ・プラン9さんとかのDVDを見てきたので、出したいという気持ちがありました。兎はどうだったんかわからないですけど。

兎 僕は……全く(笑)。出すことに対してマイナスの気持ちもないですけど、出したいという明確な気持ちもなくて。けど、堂前が出したがってるのはわかってたんで、あぁ、いいんじゃないかとは思いましたけどね。

――ベストネタではなく、単独ライブそのままをパッケージ化しようと思ったのは?

堂前 最初のDVDは単独ライブ1本のほうがいいかなと思って。ベストネタみたいなかたちが嫌いというわけではなく、後々出してもいいなという感じで。

兎 もともと昨年の単独を東京でやろうとしてたんですけど、コロナの影響で中止になってしまって。で、初DVD、初NGK、初東京といろんな初めてが重なったのはうれしいんですけど、不安な面も大きいといいますか。DVD……買ってもらえるんですかねぇ? 僕も昔は『リチャードホール』とか、さまぁ~ずさんの単独ライブとか、いろいろなDVDを買ってたんです。けど、ここ10年くらい買ってない気がするので、買おうって思考になってもらえるのかが心配で。

堂前 ふふ、買う人はいると思うよ。俺は結構買ってるし。

兎 あ、ほんま? いっちゃん最近買ったDVDはなんやった?

堂前 えーーっと、小林賢太郎さんの『カジャラ』(のDVD)かな。普通にバナナマンさんのDVDも買ってるし。

兎 まぁ、DVDでしか見られへんものやったら買う意味はあるよな。

堂前 買う人は見たいっていう気持ちももちろんあるやろうけど、所有したい、手元に置いておきたいっていう気持ちも強いやろうからね。

兎 そうか。発売が12月なんで、賞レースで結果を出すとか知名度が上がっていれば、もっと買ってくれる人も増えそうやなぁと思います。

――特典として、パッケージの絵柄も毎月替わるんですよね。

堂前 あぁ、はいはい。その辺、あんまり詳しくないんです。こんな感じでDVDを展開しますっていうのと、単独のネタをどうするか考えるっていう時期が重なっていたので、あんまりちゃんと聞いてなくて。今回、すげぇバタバタしてしまいました。

――ネタはいつも早めに作られるんですか?

堂前 いえ、いつもギリギリですね。頭の中で締め切りギリギリまでいろいろと動かしてる感じというか。そのほうがいい……わけではないんですけど(笑)、ギリギリまで考えたくてそうなってしまうんです。台本もギリギリで。並行で進めるのも苦手で全くできない。わけわからんくなるんです。だから、ネタとDVDも両立できなくて(特典などの決定は)お任せしてしまいました。

――兎さん、ギリギリに上がってくる台本を憶えるのは大変じゃないですか?

兎 大丈夫ではないですけど、僕にできない部分をやってくれているので待つしかないですよね。昔1回だけ、まだか? ちょっとネタ遅いわって言ったら、ケンカみたいな感じになった気がして。それ以降言わんようにしてます。言ったことによって(ネタの上がりが)早くなるわけではないので。堂前がサボって遅くなってるとかではないので、信じて待ってますね。

堂前 今回は人生で一番バタバタしたので、次からはもっと早く書こうと思いました。単独以外の仕事もちょくちょく増えてきてるんで、ほかの仕事と重なると無理やなってなってしまって。

兎 前回の単独から今回までの期間が、一番仕事が増えていて。一日中仕事しながら単独の準備もやらなきゃいけなかったんで。

堂前 はい……そうなんですよ……。

――今、ものすごく大きなため息をつきましたけど(笑)。

堂前 ははっ、仕事はこれ以上増えてほしくないです。僕はね? 兎はバンバン仕事したいのかもしれないですけど。

兎 俺も全く釣りに行けてないからなぁ。仕事が増えるのはもちろんありがたいんですけど、好きなことが何もできないくらい働き詰めになると、なんのために働いてんねやっていう気持ちが芽生えてまうというか。まぁ、いらないんですけど、この感情も。黙って働けばいいのかもしれないですけどね。

NSCに入るまで漫才をよく知らなかった兎

――ネタでいえば『M-1』で準決勝までいかれていますけど、やはりコントのイメージが強くあります。結成当初からコントをやりたい気持ちはあったんですか?

堂前 そうですね。コントを見て育ってきたので、わりと自然に。パッと書いたのがコントでした。

兎 どうやったっけ? 1本目がコントやったのはもちろん憶えてるんやけど、書いてきたときに俺、コントかぁって言った? それとも(堂前が先に)コント書いてくるわって言った?

堂前 えーーーーっと、全く憶えてない。

兎 ネタを持ってきたときの感じとか憶えてるんですよ、僕。堂前の初ネタを読んで、こんな感じなんかと思ったけど……コントかぁって言ったかなぁ? でも、言った気がするねんなぁ。あぁ、コントねって。

堂前 ……ふふふ、言ってたらなんなん?

――(笑)。

兎 コントか漫才かの、コントかぁっていうだけ。

堂前 ただの感想?

兎 そう。コントをやろうって(考えて)書いてきたんじゃなく、まず1本目はコ
ントやったという感じやと思うんですけどねぇ。けど、メインを漫才にしてみようみたいなのはなかった気がします。

堂前 だって、『M-1』見てなかったんやろ?

兎 NSC(吉本の養成所)に入るまで、漫才をよく知らなかったというか。ネタは自分らの面白さをわかりやすく説明するために、最初だけちょっとやらなあかんねんなぁくらいに思ってたんです。こんなにがっつりと、ずっとやらなあかんものやとは思ってなかったですね。

堂前 僕は『M-1』も全部見てましたし、お昼の漫才特番みたいなのも見てました。兎と組む前は、相方がネタを書いてたのでちょくちょく漫才してたんですけど、自分がやるんやったらコントかなぁと自然に思ったのかもしれないですね。

ロングコートダディさんへのインタビュー記事は、9月10日発売の『+act. (プラスアクト) 2021年10月号』に全文掲載されています。