ケンドーコバヤシ流の笑いの作り方
『アメトーーク!』(テレビ朝日)の「40歳過ぎてバイトやめられない芸人」の本番が始まった。
スタジオのほとんどが馴染みのない芸人だったが、俺の隣がSMA(ソニー・ミュージックアーティスツ)のだーりんず・小田さんだったことが心強かった。
ソニーの芸人は苦労人が多い。千川にある『びーちぶ』という劇場でシノギを削った仲間でもある。俺のことを理解してくれてる仲間が真横にいてくれたのは安心した。
途中で誰かがスベリそうになったが、そこは40歳を過ぎたベテランたちだ。すかさずフォローが入って空気を変えようとしている。俺も序盤に変な空気にしてしまったが、瞬時に小田さんが笑いに変えてくれた。時間が経つにつれ、ひな壇に連帯感が芽生えていくのを感じた。
収録は順調に進んだ。自分のバイトエピソードもうまく話せたし、スタジオセットを褒めることも忘れなかった。
サプライズはそのあとだった。家族に密着したVTRが流れたのだ。
そこにはアメトーークへの出演が決まったことを、うちの嫁に報告した瞬間の様子が収められていた。
友達の期間もいれたら10年近くずっと「TAIGAさんが世界一面白い」「今日も一番面白かった」「絶対売れるよ」と言ってくれている嫁。
ずっと俺を信じて、ずっと応援してくれてた嫁が、カメラを気にせず泣いてる姿を見たら、これまでの思いが一気に胸に迫ってきた。収録中なのに涙があふれてしまった。
VTR明け、泣いている俺に蛍原さんが「そんな番組ちゃうねん」と優しくフォローしてくれたのがうれしかった。
だが、売れてない芸人と家族の苦悩は、一見、感動的なシーンかもしれないが、このままではバラエティーとして成立しない。
それを悟ったケンドーコバヤシさんが「嫁さん、お前のこと世界一面白い芸人だって言うてたぞ」と、こちらにパスしてくれた。
ケンドーコバヤシさんとは、この日が初対面。なんてお呼びしてもいいかわからないほど立場の違う売れてる大先輩だが、失礼を承知で「かましてやれ」と、とっさに思った。
「そうなんですよ。だからケンコバさんよりTAIGAのほうが面白いってことですね」
「今度嫁さんに会ったらビンタして『目ぇ冷ませっ!』って言うたるわ」
ドカンと笑いに変えてくれた。