ラジオ番組に欠かせないのが、ハガキ職人(現在はメール職人と呼ばれることも多い)の存在だ。radikoの普及によって、全国各地のラジオが聴けるようになった今、番組常連のハガキ職人の存在を認識したり、さまざまな番組で同じラジオネームを聴いて驚いた経験があると思う。
そんなハガキ職人の生態や現在に迫る「Radio Holic~ラジオとハガキ職人~」。今回は、ラジオネーム「概念覆す」として、ラジオ番組のほか、雑誌『ファミ通』の投稿コーナー「ファミ通町内会」でも殿堂入りを果たし、先日の『アメトーーク!』の「芸人持ち込み企画プレゼン大会 2023」で“元ハガキ職人芸人”をプレゼンした芸人、コンピューター宇宙のブティックあゆみにインタビュー。
ハガキ職人になったきっかけ、『アメトーーク!』の裏話、どきどきキャンプの佐藤満春からもらった金言など話を聞いた。
パーソナリティーの「いい加減にしろ!」がうれしい
――ブティックあゆみさんのハガキ職人歴をお聞きしたいんですが、もともとはラジオではなく、雑誌の投稿のほうが早かったとか。
ブティックあゆみ(以下、ブティック) そうなんです。12歳くらいの頃、ファミ通町内会に初めて採用されて、そこから中学・高校はずっと投稿していましたね。その前にも、『週刊少年ジャンプ』のジャンプ放送局にも送ってたんですけど、そっちは1回も載ったことはなかったです。
僕が大学に進学したタイミングで、南海キャンディーズの山里さんがTBSラジオで『水曜 JUNK 山里亮太の不毛な議論』をスタートして、それを聴き始めて……そこからですね、ラジオに投稿しだしたのは。
――初めて掲載されたネタって覚えてますか?
ブティック 覚えてないんですよねえ……いろいろなコーナーがあって、たくさん送ってたので(笑)。ただひとつ強烈に覚えているのが、初めて掲載された号の発売と、中学の卒業式がカブってたんです。式が終わったあと、ごはん屋さんでクラスメイトと食べることになってたんですけど、そのお店の横が本屋さんで、『ファミ通』を確認したら僕の名前が載ってて! 友達にめっちゃ自慢したんですけど、相手はファミ通町内会とか知らなかったので「ああ、そうなんだ……」くらいで(笑)。
――(笑)。
ブティック “あ、これ、あんまり自慢しちゃいけないことなんだ……”と思って、そこから特に人に言わずに黙々と送ってました。それこそ、その年で一番採用された、みたいなので3回優勝させていただいて、殿堂入りを果たしました。
――すごい! その当時は、とがわKさんとか、塩味電気さん(現在芸人のおほしんたろう)とかの時代ですかね。
ブティック そうですね。僕はあまり4コマ漫画のコーナーは送ってなかったんで、とがわさんとか、おほさんの作品を“おもしれー”と思って読んでました。
――ちなみに「概念覆す」の由来は…?
ブティック 新聞の見出しで「概念を覆す技術」みたいな言葉があって、そこからつけたんですけど、画数が多いじゃないですか、当時はまだ手書きでネタハガキを送ってたし、めっちゃ数を投稿してたんで“疲れるな”と思って(笑)。途中で1文字のペンネームに変えたんですけど、結局こっちのほうがしっくり来るなと思って。
――自分の中で、会心の出来だったというネタはありますか?
ブティック 下ネタだと思わせずに下ネタを言う投稿は、テクニカルで好きですね。ひと言ネタで「ヌーディストなのに日本海側」ってネタがあったんですけど。
――めっちゃ想像できますね(笑)。
ブティック ヌーディストビーチだけど、もの悲しい感じ(笑)。
――YouTubeで「大喜る人たち」を見ているんですけど、たしかにブティックさんの投稿って、そうやって想起させる回答が多い気がします。
ブティック ダサいかもしれないですけど、自分の中での美学はあって「自分っぽくないことは言いたくない、もし言うとしても、ここぞってところ」って決めていて。自己評価は、野球で例えると「常に2塁打を打つ選手」なんです。当然、大喜利ライブとかになると、ホームランか三振か、みたいな回答をする人が必要ですし、そういうほうが脚光を浴びがちなのもわかるんですけど、僕はシュアなバッティングを心がけていきたいな、と。
で、あいつがいないとなんか物足りないな、と思わせたい。千葉ロッテマリーンズの小坂誠選手みたいな、首位打者とかは取らないけど、見る人が見れば“あいつ守備ウマッ”みたいな。
――(笑)。派手さはないけど、いぶし銀みたいな。
ブティック そうです。ただ、ラジオと雑誌はちょっと違って、やはり大掛かりなネタを送らないと印象に残りにくい。『Hi-Hiのオールナイトニッポン0(ZERO)』に「上田の曲カバーしてみました」ってコーナーがあって、上田(浩二郎)さんのオリジナルソング「YASEIのサチコ」をみんなでカバーするんですけど、みんなが弾き語りやバンドバージョンを投稿するなかで、僕は「YASEIのサチコ」をもとにした落語を投稿したんですよ。
――あはははは(笑)。
ブティック そしたら、上田さんが「こんなネタが送られてくるんだったら、もうこれ以上ないだろ!」と言って、コーナーが終わったことがあったんです。パーソナリティーの方の「いい加減にしろ!」がすごくうれしい。投稿者冥利に尽きるなと思いました。
――ほかに印象に残っているラジオ番組はありますか?
ブティック 『本村康祐・西岡隼基のオールナイトニッポン0』という番組があって、これはアマチュアのお二人がオーディションを勝ち残ってやられていた番組だったんですけど、よく聞いてましたし、投稿もしていました。