お笑いトリオ・ハナコによるDVD『HANACONTE+』が現在、発売中だ。今作は公式YouTubeチャンネル『ハナチャン』で2020年1月から公開されたオールロケコント100本の中から、ハナコ3人それぞれ、担当ディレクターが選んだ7本、主催ライブ『ハナチャンライブ~HANACONTE徹底討論会!~』で選ばれた2本、そしてファン投票で決定した6本という計15本が収められている。
また、本編の副音声、そして撮り下ろしのコント3本、菊田プロデュース企画が光る特典映像も付いた充実した1枚となっている。『キングオブコント2018』優勝後、そしてコロナ禍でも地道にコント作りに励んできた彼ら。コントブーム真っ只中の現在、実力派コント師ばかりの『有吉の壁』、コント番組『新しいカギ』に出演するなど、メディアでの活躍の場を広げている。
※本記事は『+act.(プラスアクト)2022年1月号』(ワニブックス:刊)より、一部を抜粋編集したものです。
100本のコントをロケで撮る苦労
――DVDを出そうと思った経緯を教えてください。
秋山寛貴(以下、秋山) YouTubeに映像コントを上げていこうということになりまして。最初は100本くらい撮れたらいいねっていう漠然とした考えで始まったんですけど、何かかたちで残したいなと思うようになりました。YouTubeは無料で誰でも見られるものですけど、いつまで見られるんだろうって思ったりもするじゃないですか
――確かに万が一、消去されてしまったら見られなくなりますもんね。
秋山 その点、DVDだと買ってさえもらえたら、ずっと手元に置いてもらえるというところもありました
岡部大(以下、岡部) 2020年の1月から1年間、毎週火曜日と金曜日の2回、コントを更新していくことになって。緊急事態宣言が出たときはリモートで対応しながらでしたけど、100本作れたのはよかったですね。
菊田竜大(以下、菊田) 100本も作ったので、かたちになってうれしいです。
――そもそも100本のコントを作ることに、何か動機みたいなものはあったんですか?
秋山 YouTubeを本格的にやろうってなったからだったっけ? 僕ら、前からチャンネル自体は持ってたんですけど、単独ライブの幕間に流した映像とかを上げていたくらいで、あんまり使ってなくて。
岡部 けど、コントを上げたいよねってことになって。せっかくなので、映像だからこそ楽しめるものをやろうということで、2020年の1月からロケコントを始めたんです。
秋山 僕らが始めたころ、YouTubeでコントを上げてるのはジャルジャルさんくらいだったんです。それもスタジオの白バックで撮られているものだったので、ロケコントだったら注目してもらえるんじゃないかと思ったんですよね。
――それにしても100本のネタ、しかも全てロケで撮影するとなると準備が大変そうですね。
秋山 だからやっている人がいないんだろうなって、実際にやってみて思いました(笑)。始める前に4~5本撮り溜めてスタートしたんですけど、春くらいにはストックがなくなってしまって。
岡部 すぐ底をついちゃったよね。撮るタイミングがなさ過ぎて、新幹線の車内で撮ったこともありました。
菊田 あぁ、あったねぇ!
岡部 秋山が帰りの新幹線で、これ撮るからって台本と撮り方を送ってきて。
秋山 DVDに入ってないものですけど『移動中ルーティーン』っていうネタです
ね。マネージャーさんに「新幹線の中で撮った映像って、どれくらいなら使えま
すか?」って確認して、ディレクターさんがそれぞれの映像をつないでくれたんです。(と言いながら、スマホを操作して)……今、見返して気づいたんですけど、最初に新幹線の映像を入れてくれてます。あとで、わざわざ撮りに行ってくれたんだろうな。
岡部 ありがたいね。あと『エレベーターのない階段』っていうネタも、『注文
ひとつ聞いたら戻っちゃう店員』を撮り終わってから、もうちょっと撮れないかなっていうことでできたネタで。秋山がこんなんやりたいって、その場で説明してくれて、台本がないままディレクターさんにカメラを回してもらってネタにしたんです。
秋山 撮れる時間があれば、なるべく1本でも多く撮ろうとしてましたね。
――結構、即興的に作っていたから、アドリブのたくさんあるライブっぽいコントが多いんですね。ネタの内容は、いつもどれくらい決まっていたんですか?
秋山 設定ややりとりは決まってるんですけど、やっているうちにだんだん現場でのやりとりが増えていく感じですかね。あと、見てもらったらわかるんですけど、コントの最後に毎回イラストが入っているんです。ネタは本来ならイラストが入る前に終わってるんですけど、あのあとにアドリブでやりとりしたところを入れてみたら面白かったので、毎回そういう構成になりました。
『キングオブコント』で優勝して変わったこと
――また、ロケコントを作ってみて気づいたことはありますか?
岡部 ライブだとお客さんの反応があるぶん、大袈裟にやったほうがウケるときがあるんです。けど、こういうロケコントはやり過ぎるとリアリティーがなくなるので、ボリュームを調整する感覚みたいなものも鍛えられた感じはします。
菊田 ASMRシリーズも舞台ではできないネタだよね。
岡部 そうだね。僕、この(コントで演じている)おじさん、大好きなんですよ。健気というか、伝えたいという気持ちが強い人なんですけど、ロケコントをやらなかったら生まれなかったキャラクターなので、やってよかったです。あと、僕がグリーンバックを手に入れてからのシリーズは、家の中でもこれだけできるんだっていう発見もありました。
秋山 あぁ、グリーンバックブームね(笑)。撮影の知識は全然ないんですけど、撮り方について考えられるようになったというか。ここは寄りで撮ったら面白いとか、ここは引いてほしいとか(演出的なことを)考えるようになりました。緊急事態宣言期間中、ロケができなくなってやることになったリモートも、最初は何ができるんだろうって思いながら、スタッフさんと相談して始めたんですけど、スタッフさんにRPGのゲーム画面を作ってもらうことで、そういうネタができたりしましたし。
菊田 僕は逆に困ってました。家に帰ってもまだ仕事があるんだって思うと、気が休まるときがないっていうか。科学の進歩に恐れてましたね。
秋山 ふふふ……休まる時間は一番多いはずなんですけどねぇ。
岡部 準備とかないはずなのにね。
――(笑)。2018年に結成4年で『キングオブコント』で優勝されたわけですけど、そこからネタ作りに変化はありましたか?
秋山 それは絶対ありました。自由度が上がったというか。
岡部 賞レースは今、競技化しているところがあるので、ここで展開を変えて、ここで裏切って、ここで強めの笑いが欲しいとか考えるんですけど、今はそういうことを考えず、より好き勝手に僕らが見せたいコントができてると思います。だよね?
秋山 遊びが増えたよね。それこそ『キングオブコント』でやったネタは、一言一句違わずっていうか。語尾も言い回しも変えて……第何稿なんだっていうくらい何回も練り直したものですけど、僕らがYouTubeでやってることは真逆ですから。いろんなコントが作れるようになったのは楽しいですね。