事務所にそんな力はない
私が『ゴッドタン』に出演した時も、『アメトーーク!』に出演した時も、公式Twitterでの告知はなかった。なるほど、なるほど。告知は基本的にしないのね? そういうスタイルなのか。申し訳ない。芸人としてあるまじき早合点をしてしまいました。そういうコンセプトがあるなら早く気づくべきでした。
※時間がある方は、リンク先をご覧ください
そうでもないんかい。場合によっては告知するんやないか。なんで、ますおかさんだけ……。まるで、ますおかさんのせい……(以下同文)。
いや、別に何かを訴えたいとかじゃない。ぶっちゃけた話、私をもっと売ってくれとも思わない。ただ、あまりにも「ココが変だよ松竹芸能」が多すぎるだけなのだ。
さあ、これを悪口と取る人がいるのが厄介だ。私は事実を並べているだけなのに。
例えば、ヒコロヒーがT Vに出だした頃に、よく彼女の発言がネットニュースを賑わせた。そのたび、「事務所のゴリ押しで出てるよな」「〇〇のバーターですね」というコメントがついた。ああ、こんな事は言いたくない。だけど、はっきりと言わせてほしい。
「松竹芸能にそんな力は一切ない」
これは悪口じゃないんです。事実です。
ヒコロヒーのブレイクは、彼女の実力で成し遂げたものだ。その過程が今までの芸人と少し違っただけ。事務所の人間だってそれに気づいている。だから、こんな事を言っても怒られたことはない。
だけど、事実は人を幸せにしない
私は、これまで事実しか言っていない。だから悪口と取られるのは心外だ。
ただ……私は薄々気がついている。事実だったらいいのか? 事実は皆を幸せにするのだろうか?
ところで、これを見てください。
松竹芸能が満を持して立ち上げた、学生芸人の賞レースの募集告知ポスターである。皆さんは、どう思いますか? まず、私の感想を述べさせていただきたい。
「5万の賞金って少な!」→事実である。
「え! 5万って大きく書いてるけど、それに引きがあると思ってるんだ」→事実である。
「やば! 5万のくせにエントリー費500円取ってるやん!」→事実である。
「M−1は1000万で2000円のエントリー費やから、同じ割合で計算したらエントリー費10円じゃないと、あかんやないか」→事実である
「『夢のサポートします』って、これまでどの芸人の夢のサポートもしてないやろ!」→ちょっと悪口である。
最後はご愛嬌だが、ただ今回に関しては私に悪口を言う権利がある。これにエントリーした学生芸人があまりに不憫なので、私はこの賞レースに5万を自腹で出すことにしたのだ。
芸人仕事だけで食えず、バイトをしている芸人にとって5万の出費は痛い。でも出します。「みなみかわは悪口ばっかりやな」と言っている先輩聞いていますか? 私は出します。口だけじゃない。金も出す。
これには学生芸人も喜ぶだろう。ライブのエンディングで破天荒よろしく、5万円を手に乱入するのだ。お客も賞金が倍に跳ね上がる瞬間を見て狂喜乱舞するだろう。想像しただけで胸が膨らむ。
当日、私は文字通り乱入した。ATMでおろした丸めた5万を持って。
その結果……ちょっとスベった。めっちゃではない、ちょいスベり。そして、全体的に「なんかややこしい人が来たな……面倒臭いなこの人」という空気が流れていたことにも気がついていた。
頼まれもしないのに、ただ事実を言いたいだけで、なけなしの5万を持って乱入した男は、かなり厄介な存在になっているのだろう。
「事実すぎるのもよくないぞ……」
帰り道、バイクに跨った私の独り言は、夏の夜空に消えていった。
(構成:キンマサタカ)