テレビに出て稼ぐ王道に憧れて

副業。今や日本全体が推し進めてる大事な稼ぎ。そして、それは芸人の世界でも……。

私が芸人になった頃、副業なんてあり得なかった。本業で稼げずバイトをしないと食えないくせに、副業で稼いで店を持ったり。「そんな芸人にはなってはいけない」と先輩たちに教えられた。

いわゆるそれは「ヨゴレ」であると。

「ヨゴレ芸人」とは何か、を養成所では習ったことはないけど、とんでもなくイケナイ領域に足を踏み入れた芸人だと認識していた。

当時の私たちの目標は「芸事1本で食う」。これがすべてだった。それは「テレビに出て稼ぐ」と同義だった。

どうやったらテレビに出られるか。

「M-1などの賞レースで結果を出し、さまざまな番組に呼ばれて、お茶の間でお馴染みになる」

これが王道パターン。いや、これ以外は考えられなかった。それ以外は芸人としてカッコよくないし、もはや芸人でもないと。

あれから18年近くの時が経った。

賞レースなど当然無縁な私。それに出る資格すら失い、なんの結果も出さないまま芸歴だけが嵩んでいく。養成所にいた頃、まだまだ笑いのオタクだった若い日の自分に、今の自分を見せれるだろうか?

システマを使い、体を張って「痛くない」と言い切り、

妻がいろんな人にDMを送り仕事を取り、

Twitterで所属事務所をいじり倒す。

これがイケナイ領域でなかったらなんなのか?

養成所にいた純朴な南川青年は、今の私を見て「なんだよ……ただのヨゴレじゃねえか。スキンヘッドだし!」と走って逃げるかもしれない。

「待ってくれ、話を聞いてくれっ!」なんて言う資格は私にはない。

なぜなら、すべて事実だから……。