吉高由里子似の美女が明かす体験談

都内の人気繁華街にある、とあるバーで働く友人男性から「うちの店へ遊びに来ない?」と誘われて、飲みに出かけたのは数年前、まだコロナ禍になる前の話。

はじめての人と出会える場は、新たな怪談の宝庫だ。だから、こういう集まりにはなるべく顔を出すようにしている。

10人ほど座れば満席のバー。それでも狭っ苦しい感じがしないのは、内装のセンスによるものだろう。

入り口のドアを開けて立っている僕に、友人男性は笑顔で手招きをした。空いているカウンターの席に座ると、周りには常連さんたちが何人もいて、みんな和気あいあいと話している。

こういうアットホームなバー、は一見さんに敷居が高い場合があるけど、このお店は誰でも分け隔てなく受け入れてくれるような、温かい空気が流れている。日頃から、この友人男性の人懐っこさ、周りとの壁がない感じが素敵だなと感じていたけど、そんな彼の良さが客層にもつながっている気がした。

挨拶もそこそこに、友人の彼が僕のことを「こいつさあ、友達なんだけど、怖い話を集めてるんだよ、誰かない?」と指さして紹介してくれた。

ぶっきらぼうな口調の裏側に、このお店に早く馴染んでほしいという彼の優しさを感じた。

「えー、怖い話?」

「いいね! 誰かないの?」

「なんかあったっけな~」

「俺、怖いのムリ~! それよりもエッチな話しようよ」

「バカ!」

口々に盛り上がってくれる常連さんたち、ありがたい。

そのとき、「……わたし、あります」と決して大きくないけど、意思の強そうな声が聞こえてきた。

声のしたほうに顔を向けると、カウンターの一番端に、ひと目で「美人な方だな」と思う女性が座っていた。

薄めの顔立ちに、清潔感のある黒いサラッとした長い髪。芸能人で言うと吉高由里子さんに似ているだろうか。

耳には大きめの可愛いピアス。カジュアルな格好ではあるけれど、上品さとおしゃれさが見てとれる。着ている白色のパーカーも、びっくりするような値段なんだろうな、と思わせる。

「私の話なんですけど……いまだによくわからなくて、あまり思い出したくないんですが、ずっと自分の中でモヤモヤしてるから、誰かに聞いてほしくて」

彼女の中でも悩んでいる様子が、まばたきの多さと唇に手をあてる仕草でこちらにも伝わってくる。

彼女は、普段は都内の飲み屋でお仕事をしているという。

キャバクラ? ラウンジ? なんとなく頭をよぎったが、そこまで職種は重要じゃないだろうと思い、話を遮ることはしなかった。

職業柄、いろいろな方との出会いがあり、それなりの時間を共に過ごすため、さまざまな話をする。会話や仕草のなかで、ときめいてしまうような機会もよくある、と話し始めた。

場合によっては、出会ったその日に、そのまま意気投合して一緒に朝を迎えることもあるそう。

「お客さんとすぐ寝てしまうのは、こういう仕事の接客方法としては褒められたことではないのかもしれないんですけど……私は別にお金を稼ぎたいわけじゃなくて、自分が一緒にいて楽しくて、高まっていくような人だったら、それでいいんです。逆に、どんなにカッコよくても、お金持ちでも、それを感じられない人はダメなんです」と彼女は説明した。

特定の人をあまり作ろうとしないのも、変に深入りされて、自分も相手もイヤな気持ちになるのを避けるためだそう。

ここまでを早口で説明して、グラスのお酒を飲み干してから、彼女は話しだした。