怪談家という活動をしていると、ありがたいことに「こんなことがあったんですけど、もし良かったら喋ってください」と言われることが多いんです。
これは関西で怪談ライブをやると、よく観覧に来てくれていた女性から伺った話。
その女性は、年の頃で言うと20代半ば。目鼻立ちがはっきりとしていて背は少し低め。とてもお綺麗な方で、ご本人は謙遜していましたが、女優の広瀬すずさんにどことなく似ていました。
それだけの美人、さまざまな恋愛をしてきただろうことは容易に想像できますが、聞くと今は3年前からお付き合いしている彼氏がいて、仲良くしているそう。
彼はとても誠実な方で、仕事にも熱心。そのせいもあって、互いの予定が合わず、そこまで頻繁にデートはできないけど、こまめにLINEはくれるし、会ったときはとても優しくしてくれるそうです。
今はまだ同棲できてないけど、ゆくゆくは一緒に住んで、30歳までには結婚したいというのは彼女の希望。なんとなくそんな話になったりもするけど、相手は嫌がるどころか、どんな家に住んで、家事はこんなふうに分担して、というところまで一緒に考えてくれるから安心感があるんです、と話してくれました。
そんな彼女が1年くらい前、彼氏と繁華街でお酒を飲んだ流れで、カラオケボックスへ行くことになったそう。
「ずっとコロナで飲みに行けなかったし、デートも久々だったこともあって、ただのカラオケだけど、それがとても楽しくて心地よかったんです」と、彼女は楽しげな言葉とは裏腹に、怯えた表情で語りだしました……。
カラオケでイチャつくカップル
カラオケでYOASOBIを歌うと、新しい曲を歌う私に合わせてくれたのか、ヒゲダンを歌ってくれる彼。
“このカラオケのために、最近の曲を聞いて練習してくれたのかな?”
彼も今日のデートを楽しみにしていたことが、そんな行動で伺えて、愛しさがより強くなる。
私が十八番のaikoを歌うと、彼は私が好きなMrs. GREEN APPLEを歌う。これまで歌えなかった、そして会えなかった鬱憤を晴らすように、二人で交互に次々と歌う。
彼はカラオケのときは照明を落として薄暗くするタイプ。
なんとなく歌い疲れて、ひと息ついたとき。ムードもお酒の勢いもあって、本当はよくないのだけど、横に座る彼氏の手が私の下に伸びてきた。両足が山だとするとその谷の部分にささっと入ってきた。
いつもだったら“やめてよ!”って笑いながらはねのける、というか、そんなことをするような彼じゃないけど、その日は私も久しぶりだったこともあったし、“嫌じゃないな”となんとなく思い、彼の目を見て何も言わなかった。
そうして彼の手を受け入れると、その手が谷底を行ったり来たりゴソゴソと動く。
谷底の一番手前まで来ると、彼の指の動きが本格的になった。
“んっ”
突然の気持ち良さに、私は声を漏らしてしまった。
歌ってないから、切り替わった画面からはCMのような感じの映像が次々に流れている。
「今回、ニューアルバムをリリースされたんですよね!!」
女性タレントの甲高い声が部屋中に鳴り響いている。
画面の向こうと、こちら側の落差が激しい。
私は、その画面をなんともなしに眺めながら身を任せていた。
すると、興奮した彼がおもむろに自分のTシャツをめくった。
Tシャツの前面を下から上までめくり、めくった部分を顎で押さえている。
何も言わないが、彼がこうしたときにやって欲しいことはひとつだと見当がついた。
彼はどちらかというと、というか、かなりのMだ。
マグロのM。
これまでもそういう行為のときは、自分からベッドにゴロンとなって、さあどうぞ、みたいなスタイルになるのが常だった。
これまでの彼氏だったら気持ち悪いな、と思っていたかもしれないけど、とにかく彼のことが好きなので、こういうところも可愛いなって思ってる。
この日も特に何も言わず、彼の胸元のそこへそっと顔を近づけ、胸の突起した部分を舐めた。
谷で彼の指が動くなか、上では彼の突起を私が攻めているその最中、突然、彼が「うわあ!」と悲鳴をあげた。
その声にビクッとなって、彼が凝視している方向をとっさに見る。
彼は部屋の入口を見ていた。
その部屋には、入口のドアに縦長の窓がある。
細長いガラスの真ん中の部分は、目隠しのような磨りガラスになっている。
そして、その磨りガラス部分の上と下は普通に窓。
その上の部分から……顔が見えていた。