渋谷、二子玉川とともにプラチナトライアングルの一角を担う自由が丘。東急線の中でも屈指のおしゃれな街として知られるが、じつは東急が造った街ではない。それゆえ区画は入り組み、個人商店も多い。おしゃれさとは裏腹の猥雑さも感じられるのが自由が丘の魅力だ。しかし、課題もある。東急電鉄株式会社の執行役員の東浦亮典氏のリアルな評価とは?
※本記事は、東浦亮典:著『私鉄3.0』(ワニブックス刊)より、一部を抜粋編集したものです。
個性的な店が多いのも魅力のひとつ
渋谷、二子玉川とともにプラチナトライアングルの一角を担う自由が丘は、古くからおしゃれなイメージがあって人気の街ですが、都市開発視点でみればまだ手を加える余地がある「魅力的な街」です。
実は自由が丘は東急が造った街ではありません。昔からの大地主さんとこの地を拠点として商売を営んできた商店主たちが、自助努力を重ねてブランド価値を高めてきた珍しい街なのです。
昨今、商店街の衰退が全国各地で課題となっている中、自由が丘には大規模小売店舗が少なく、未だに個性的な個人経営の店が多数存立しており、この地にアンテナを張っている有名ブランドショップとも相まって、とても元気があって魅力的な街という評判を得ています。
自由が丘商店街振興組合にはなんと約1300もの加盟店があり、結束力、企画実行力も高いパワフルな商店街を形成しています。普通はビルオーナーになると、自分のビルのことばかり考えることが多い中、自由が丘ではむしろビルオーナーが積極的に街のブランディング活動を展開している点が素晴らしいのです。
ごちゃごちゃと道が入り組んでいるのも散策気分を高めてくれます。その猥雑さも自由が丘の魅力なのですが、逆に言えば、「大勢の人を一気に受け入れることを想定した街ではない」とも言えます。この街の魅力と裏腹ではあるのですが、道路が狭く複雑に入り組み、雑居ビルも多いので、いざという時の災害には弱い街だと言えます。
1973年に自由が丘商店街が産みだした「自由が丘女神まつり」は、数ある自由が丘のイベントでも最も人気のイベントに成長しており、開催期間中には数十万もの人が訪れます。今では東急グループも協力して女神まつりを盛り上げていますが、まつりの日になると駅のホームにも街にも人があふれてしまって、大変な混雑ぶりです。