映画館が消えてしまった街

自由が丘は小さいお子様連れのファミリーやシニア層にも人気の街ですが、どの道路も狭く、歩道も完備されていない上、自動車も往来しますので、ベビーカーや車椅子を利用される方には大変不便であるという一面もあります。

さらに「自由が丘」という素晴らしい街の響きに反して、駅周辺にはあまり緑の空間が少なく、公園や広場なども不足しています。

先ほど述べたように、かつては「働く」というイメージはなかったものの、ライズにオフィスビルができて業務立地としても発展した二子玉川。私は自由が丘にもそのポテンシャルがあると思っています。

タワーマンションや高層オフィスビルはあまり似合わないと思いますが、必ず「自由が丘に合ったスタイル」があるはずです。

昨今流行しているスモールオフィスやコワーキングスペースなど、自由が丘の雰囲気が好きで、この街にとどまって働きたい、地域に貢献したい、という人は潜在的にいるでしょう。

また海外からの観光客含め、全国から自由が丘に訪れるお客様は多いものの、宿泊機能はほとんど有していません。ゲストハウスやホステルのようなプチホテル機能があっても良いと思います。

かつてはこの街には映画館が複数館存在していたのですが、全て閉館してしまいました。残念ながら、ギャラリーやイベントホールを含めた文化施設がほとんどないのも実情です。

もともと自由が丘は閑静な住宅地の中に商店街が発祥し、それが後に拡大してきて今の形になっていますので、平日昼間や休日の集客力は高いものの、夜の需要は高くありません。住む、遊ぶだけでなく、働くや集う、学ぶなどの多様な街の機能を付加することによって、自由が丘の街の価値はさらに高まるはずです。

ゲリラ豪雨対策も必要

自由が丘周辺には都市計画道路予定線が数本通っていますが、諸般の事情で事業が実施される見込みはまだ立っていません。また東横線、大井町線が街を平面的に通っていますので、これにより街が分断されているという指摘もあります。

まだ先の話になろうかと思いますが、鉄道の連続立体事業が実施された暁には、自由が丘の街の骨格の再編成が実現されることになります。

ハザードマップ的な観点から言っても、自由が丘には課題がまだ山積みです。自由が丘という名称ゆえ小高い丘の街をイメージされるかもしれませんが、駅周辺は低地状になっており、昨今増えているゲリラ豪雨の際には、一部冠水してしまうエリアもあるのです。
そんな自由が丘の街の課題を解決すべく、行政や地元の方々とも再開発の勉強を少しずつですが重ねています。

自由が丘の街は地域の方々を中心に経営する「ジェイ・スピリット」というまちづくり会社を持っています。ジェイ・スピリットは2016年に、都市再生特別措置法に基づき地域のまちづくりを担うことができる「都市再生推進法人」に指定されています。

またそれとは別に地域の方々と東急電鉄グループが平時からさまざまなコミュニケーションを図る「自由が丘バリューアップクラブ」という組織も持っています。こういった場での議論を踏まえて、近い将来に街の魅力が何倍にもなるような素敵なまちづくりをしていきたいと思っています。