飲み屋で仕事の愚痴をこぼすサラリーマンを見てどう思いますか?「ああはなりたくないな」と冷たい眼で見ているかもしれません。でもこの愚痴、そう悪いことばかりではないのです。国民的ロングセラーアイス『ガリガリ君』の開発者であり、育ての親でもある鈴木政次氏は「(愚痴)気持ちをすっきりさせる消化酵素のようなもの」と言います。頭をクリアにして、アイデアを生む究極の仕事術を紹介します。

※本記事は、鈴木政次:著『スーさんの「ガリガリ君」ヒット術』(ワニブックス刊)より、一部を抜粋編集したものです。

愚痴を排泄して、アイデアを生む

「今日、部長に怒鳴られちゃってさ」
「営業に行ったら、門前払い。まいったよ」

帰宅途中に、赤ちょうちんで仕事の愚痴をこぼしているビジネスパーソンに対して、どんな思いを持っていますか。まだ、社会に慣れていない若い人は、あまり快く思わないかもしれません。でも、社会に出たら、愚痴はためずにどんどん言ったほうがいい。頭が切り替わり、新しいアイデアが湧いてくるからです。

落胆した気持ちや怒りは、時間が経つと消化して、外に排泄(はいせつ)されるようになっています。時間の長さは人によって異なるでしょう。少しでも早く、排泄してしまいたいのなら、誰かに話してしまうのがいちばんです。自分の中にため込んでおかない。

物を食べたあと、体を動かしたりして運動すると、きちんと消化して、栄養分は体内に取り込み、いらないものは外に排出されます。同様に、体の中に入った落ち込んだ気持ちや怒りも、「人に話す」「愚痴をこぼす」という運動によって、きちんと排泄ができます。

しかも、できごとを話すことで、「あの時は、落胆したけれど、勉強になった部分もあるな」と気づきも生まれる。その気づきは栄養分(=学び)として、自分の中に蓄積され、次に同じ場面があった時に、生かすことができます。

「愚痴をこぼす」のは、いけないことではなく、気持ちをすっきりさせる消化酵素のようなものなのかもしれません。落胆した気持ちや怒りを腹にためておくと、体によくありませんし、それらがいつまでも頭の中を占めていると、新しい考えが生まれてくる余地がありません。

私は、若い頃から、落ちこんだり、憤慨したりすると、同僚や先輩に愚痴をこぼしていました。すると、すっきりして、新しい力がみなぎってくるのを感じました。普段から、落ち込んだ気持ちや怒りをためないように、しょっちゅう同僚や後輩と食事をしたり、飲みに行ったり、あるいは麻雀(マージャン)をして遊んだりもしていました。

今思うと、遊ぶことで気持ちを切り替え、ストレスを一掃していたのでしょう。だからこそ、いつまでも落ち込まずに、『ガリガリ君』をはじめ、次々と新しい商品開発に挑戦することができたのかもしれません。

新入社員は「できないヤツ」といわれて当たり前

子どもの頃から成績がよく、大学はトップで卒業。でも、社会に出て会社に勤め始めた途端、上司に「できないヤツ」とダメ出しばかりされる。人生で味わったことのない挫折(ざせつ)感に打ちのめされて、くよくよ悩んでしまう。

そんな新入社員の悩みを聞くことがあります。でも、悩む必要はまったくありません。

そもそも「学生時代」と「社会人」、「管理職」とでは、使う脳の場所がまったく違います。脳は使うことで、活性化するといわれます。社会に出た途端、これまで使っていたのとは違う脳を使うのですから、「できないヤツ」といわれて当たり前なのです。

これまで、多くの新入社員を見てきたのでよくわかります。