一般的には、20歳前後が最も免疫力のバランスが良いと言われています。そして、高齢者の病気には免疫の老化が影響していることが多いようです。医学博士の飯沼一茂氏によると、「フレイル(虚弱)」を予防すると、免疫の老化を妨げ、健康に長生きしやすくなるそうです。免疫やフレイルを正しく理解して、健康寿命を延ばす方法を紹介します。
※本記事は、飯沼一茂:著『免疫アップの最強セットリスト -自分で選ぶ健康寿命の延ばし方-』(ワニブックス:刊)より一部を抜粋編集したものです。
免疫が老化すると「がん」のリスクも高まる
免疫システムは、体内に侵入する病原体や異物を検出し、攻撃して排除する役割を果たしています。しかし、年齢の進行とともに免疫システムの一部が変化し、免疫応答の効率が低下する傾向があります。
こうした年齢とともに免疫システムが機能低下する現象を「免疫の老化」と呼びます。また、免疫系の機能が低下すると、慢性的な炎症反応が高まることに焦点を当てて「炎症性老化」と呼ぶこともあります。
免疫の老化は、どのように起こるのでしょうか。
まず、免疫細胞の数や機能が減少し、免疫応答の効果が低下します。特に、T細胞やB細胞の活性が低下し、感染症に対する抵抗力が弱まることがあります。
また、年齢を重ねると、免疫システムが炎症反応を制御するための調節機能も低下することがあります。免疫システムは、異物や病原体への攻撃だけでなく、自身の組織や細胞への攻撃を防ぐためにも調節されているのですが、その調節する性能が下がるのです。
それにより、体内で低レベルの炎症反応が持続的に生じることがあります。これは体内の免疫応答が正常に調整されていないことを示しています(インフラメーションの増加と呼びます)。
慢性的な炎症が増加することにより、過剰な炎症反応や自己免疫疾患など、慢性疾患のリスクが高まる可能性があります。慢性疾患の例として、がん・心血管疾患・糖尿病・関節炎・神経変性疾患などがあげられます。
免疫の老化により、免疫応答が遅れたり、適切におこなわれなくなったりすることもあります。免疫系の一部の機能が過剰に活性化されることもあり、これらにより、体は正当な脅威に対する適切な免疫応答をおこなうのが難しくなります。その結果として感染症への抵抗力を低下させます。
ワクチンの効果にも影響をおよぼすことがあります。高齢者は、感染症に対する保護が低下します。そのため、高齢者には定期的なワクチン接種がすすめられます。
高齢者は、免疫システムの変化に伴い、身体的な弱さや脆弱性が増加することがあります(「フレイル」。後に詳述します)。これは、感染症に対するリスクを高める要因のひとつです。
老化による免疫システムの変化は個人差が大きいため、健康状態やライフスタイルが影響を与えていると考えられます。一般的には、20歳前後が最も免疫力のバランスが良い状態ですが、加齢とともにバランスが低下していきます。
気づかないうちに体内には慢性炎症状態が生じていて、60歳前後になると、さまざまな慢性疾患が表出するというパターンが珍しくありません。慢性炎症状態は、よくない生活習慣のなかで自覚症状がないまま少しずつ蓄積されることが多く、働き盛りのある日突然、重大な疾患となって現れることも多くあり、注意が必要です。
炎症性老化は、長寿命社会において重要な健康課題であり、研究が進行中です。将来的には、このプロセスを理解し、健康寿命を延ばすための介入策を開発するのに役立つかもしれません。
年齢に合わせた健康管理のアドバイス
年齢に合わせた健康管理は、健康と幸福を維持するために非常に重要です。以下に、異なる年齢層に対する健康管理のアドバイスを提供します。ただし、個々の健康状態やライフスタイルに合わせて実行することが重要です。
いずれの年齢層にも共通して、禁煙や適度なアルコール摂取、適切な水分摂取、ストレス管理、予防接種を受けることなどが健康に良い習慣です。また、個々の健康状態に応じて医師や専門家との相談も大切です。健康管理は一生涯の取り組みであり、予防と早期対応が健康長寿の鍵となります。
若い年齢層(10代から20代)
・健康な食事
栄養バランスの取れた食事を摂りましょう。果物、野菜、穀物、タンパク質をバランスよく摂取し、加工食品や糖分を控えましょう。
・運動
毎日運動する習慣を身につけましょう。有酸素運動と筋力トレーニングを組み合わせることが理想です
・睡眠
十分な睡眠を確保し、規則的な睡眠サイクルを保ちましょう。
・ストレス管理
ストレスを軽減する方法を見つけましょう。リラクゼーションや趣味の活動が役立つことがあります。
中年層(30代から50代)
・健康診断
定期的な健康診断を受け、潜在的な健康問題を早期に発見しましょう。
・食事管理
カロリー摂取を調整し、食事の質を高めて、体重を管理しましょう。
・運動
適切な運動を継続し、筋力や柔軟性を維持しましょう。
・ストレス管理
仕事と家庭のバランスを取り、ストレスを管理する方法を見つけましょう。
高齢層(60代以降)
・健康管理
慢性疾患の管理を重視し、医師の指導に従いましょう。
・適度な運動
適度な運動を続けて筋力とバランスを維持し、転倒を予防しましょう。
・栄養
カルシウムとビタミンDを含む栄養素を十分に摂取し、骨密度を維持しましょう。
・社会的活動
社会的なつながりを維持し、心身の健康にプラスの影響を与えましょう。